「もしかしたら視聴者の皆さんはフルCGだと思ってるんじゃないか」“存在し得ない場所を探す”『海に眠るダイヤモンド』ロケハンチームが目指した端島の再現
さらに、「端島銀座」を再現したオープンセット(野外にある装置)は、長期の撮影でも倒れないように躯体を活かして建てられている。こういった壮大なオープンセットを建てる場所を探すのもロケハン担当者の役割で、この場所を見つけるのにも別の苦労があったそうだ。「立地条件としては、長期間セットを建てておくことができ、撮影に適している環境であること。また、大掛かりなセットなので、倒れないようにするための技術的な条件を最低限満たしていることもポイントでした」と、いくつもの条件をクリアした場所であったことを教えてくれた。 とはいえ、リアルな風景だけで端島を再現するのには限界がある。そこで活躍しているのが先ほども登場したVFX技術だ。大藏氏も完成映像を見て驚いたという。「純粋にすごいなと思いましたし、もしかしたら視聴者の皆さんはほぼグリーンバックで撮影したフルCGだと思ってるんじゃないかな。美術部さんや僕らロケハン担当としては少し悲しいですが(笑)」と、笑いを誘った。 ■ロケハンは足で地道に…驚愕の移動距離と、撮影チーム全体への知られざる配慮 本作のロケハンに携わったのは5人ほどで、これまでに視察した場所は100ヶ所以上にも及ぶそう。そして全て足を運んだというから驚きだ。「ある程度ネットのマップで目星をつけて探しにいきますが、実際に見てみると想像と違うことも多い。理想的な場所はそう簡単には見つからないので、車で走って、歩いて探しての繰り返し。撮影での移動も含めると本作だけでも2万5000キロ以上は走ったのではないでしょうか」と、衝撃の移動距離についても触れる。 特に本作では、“緑なき島”を再現できる場所を探すのに膨大な時間を要した。「背景に木が1本あるだけで、まずはどう隠すかを考えなきゃいけない。ロケハン担当として、そうやって撮影に制限を作ってしまうことは一番したくないことなんです。完璧ではないかもしれないけれど最適な場所を探し出すのが僕らの役目ですね」と仕事にかける思いを口にする。
ロケハン担当が場所を選ぶときに考慮するのは映像に映る風景だけではない。「ロケ地のクオリティはもちろん大切ですが、スタッフの皆さんの作業環境を整えることも僕たちの重要な仕事。近くに暑さをしのげる場所や、お手洗いなどがあって過ごしやすい場所がベストですね」と、チーム全体への配慮も忘れない。まさにドラマ制作の陰の立役者ともいえる存在だ。
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