じもとHD→国有化、農林中金→1兆円増資…金融機関も国債運用で“大ヤケド”の惨状
金融機関をめぐるバッドニュースが相次いでいる。 きらやか銀行と仙台銀行を傘下に持つ「じもとホールディングス」(仙台市)は、事実上の国有化が不可避となった。きらやか銀の経営悪化により、2024年3月期連結決算の純損益は234億円の大赤字。公的資金の返済が困難になったためだ。背景にあるのは、与信関係費用の膨張と運用失敗。金融機関の大ヤケドはこれにとどまらないから恐ろしい。 荻原博子氏が解説「新年度 生活防衛のツボ」株価史上最高値でも庶民は投資をやめるべき きらやか銀は09年に金融機能強化法に基づいて国から公的資金200億円の注入を受け、優先株式を発行。配当を優先する代わりに議決権がない仕組みなのだが、無配の場合は議決権が生じる。仙台銀との経営統合でHDが発足した後の12年12月に100億円、23年9月にも180億円を注入。仙台銀にも11年9月に300億円が投じられ、HD全体の公的資金残高は780億円に上る。 そのうち、きらやか銀の200億円は今年9月が返済期限。しかし、収益悪化によりジャンプを余儀なくされ、6月下旬の株主総会に優先株の配当見送りを含む議案を提出する方針だ。 「取引先の粉飾決算で与信コストが膨らんだほか、金利上昇で国債などの損失が発生し、収益を大幅に悪化させた。それで公的資金200億円の返済スケジュールについて国と協議を始めたようです。期限通りに返済したら、不測の事態に耐えられない可能性が高まるため、体力があるうちに膿を出し切り、財務健全化を急ぐ道を選びたいのでしょう。国も金融不安を広げないため、返済猶予を認めざるを得ないのではないか」(金融関係者) ギョッとするのは運用損の大きさだ。じもとHDの24年3月期決算短信によると、2行合算の「国債等債券損益」は前期比40倍の85億9000万円。その大半をきらやか銀が占めている。 「じもとHDは20年11月にSBIホールディングスと業務提携し、SBIが主導する地銀連合に加わった。きらやか銀も仙台銀も第2地銀で運用ノウハウが乏しいことから、SBIの指導に沿って米国債を含む債券を仕入れたものの、相場が逆に動いてヤケドを負ってしまった」(市場関係者) ■新NISAで前のめりは危うい 国内屈指の機関投資家の農林中央金庫も米国債で大損。23年12月時点で1兆9000億円超の含み損を抱え、1兆円規模の増資を検討しているという。25年3月期の純損益は数千億円規模となる見通しだ。 比較的安全とされる国債運用で、金融のプロでもこのありさま。新NISAで前のめりは危うい。