小池都知事、出馬表明は告示直前 「圧勝神話」は崩壊か
蓮舫氏の東京都知事選挙出馬表明をうけ、小池百合子東京都知事は3選に向けてどう出るのか。政治とカネの問題で逆風が吹く自民党の支援は──。 小池百合子・東京都知事(71歳)は今回もまた、立候補表明時期について「煙に巻く」作戦のようだ。前回もそうだった。その政治決断の迅速さと隠密性が、彼女の真骨頂ではある。これは身内の地域政党・都民ファーストの会(都民ファ)幹部にさえ、「わからない」「知らされない」ほどの小池流「雲隠れ技」で、突然トップダウンで降りてくるという。 「空気的には、きょうは出馬をしゃべらないのではないか。しゃべるなら、もう少し違った空気だと思う。今朝、所信表明の原稿を書いた紙が議員に配られたが、その中には出馬宣言に関することはなかった。ただ、サプライズで、読み終えた後にいきなり、という可能性もゼロではない」 都民ファの都議は、告示前最後の都議会定例会が開会する5月29日昼、筆者の取材にこう語った。 「小池知事3選出馬へ」の見出しが新聞各紙で躍ったのは5月26日。各紙とも6月20日告示の東京都知事選で、現職の小池氏が立候補する意向を固め、議会開会日の29日にも表明する可能性を報じていた。翌27日には立憲民主党の蓮舫参議院議員が無所属で立候補する意向を表明した。さらに28日、都民ファと公明党の都議団が小池知事に出馬を要請。都内52区市町村長も同日、連名で立候補を要請していた。 与党・都民ファと、「ステルス応援団」と呼ばれる自民党・小池支持派などによって、舞台装置はこのように、ほぼ完全に準備されていたのだ。 【6月12日に表明か?】 にもかかわらず、29日の表明はなかった。注目の都議会本会議には、「もしや」とばかりに多くの報道陣が詰めかけたが……。 小池氏は8年前、知事就任の最初の都議会で次のような所信表明を行なっている。「今の都民のために、そして未だ見ぬ100年後の都民のために、働かなくてはいけない。(中略)『これからもっと東京は良くなる』と都民が希望を持てる都政を展開する」と。そして今回の告示前議会の開会日の冒頭発言では、この自身の最初の所信表明演説を引き、「この決意は一瞬たりとも揺らいだことはない。とりわけ新型コロナウイルスとの1200日に及ぶ闘いは、都民の健康と命を守り抜くために、全身全霊を傾けた日々」だったと自画自賛した。 2期8年間の自らの実績を次々と披露した所信表明は30分間に及び、「都民が第一、『都民ファースト』で推し進める東京大改革の先にこそ、明るい未来は拓かれている」と括った。 5月は表明がないままに過ぎ、次の出馬表明の時期は「今議会の会期末(6月12日)になるのではないか」(都民ファ幹部)との見方が有力だ。焦らし作戦とも言えるし、「カイロ大学卒業は本当なのか」といういわゆる「経歴詐称疑惑」が追及されにくい、自らにとって最も有利な「時と場」を測っているとも言えそうだ。 小池氏と蓮舫氏の戦いが今回の首都決戦の焦点となる中、小池陣営では、どのような選挙戦を展開しようとしているのか。都民ファの尾島紘平幹事長は小池都政の具体的な実績のうち大きなものとして、新型コロナ対応を強調する。 「東京都は人口比で言うと、コロナによる死者が非常に少ない。医療提供態勢、ワクチン接種態勢、あるいはPCRの検査態勢といったハード面の整備をかなり手堅くやっていたからだ。その間、知事は一日も休んでいなかった。『密です』『ソーシャルディスタンス』とかの言葉をいち早く普及させ、知事としてのメッセージの出し方が秀逸だった」 もう一つの大きな実績として、尾島幹事長が挙げるのが「子育て支援策」だ。 「就任直後から取り組み、保育園の増設、保育士の処遇改善、都有地を使っての保育園の用地確保……。あらゆる手立てを使って、待機児童の解消に全力を注ぎ、都内の待機児童はほぼいなくなった」と宣伝する。蓮舫陣営からの批判的評価は正反対だが……。 「新型コロナの5類移行後」については、小池氏が環境やエネルギーなどの中・長期的な問題に取り組む姿勢を強め、「政策の力点に変化が見られる」と指摘する。 では、どこが選挙戦のキーポイントになるのだろうか? 尾島幹事長は「これはシンプルに、都民ファーストであるかどうか。都民ファーストの都政を継続するか否か、という点です」。