デビュー1年で『紅白』出場。ILLITの活躍を語るために欠かせない「3つのポイント」
TikTokやYouTubeを意識した曲作りと振り付け
瞬時に心をとらえて、しかも真似をしたくなる振り付けを目指す――。 ILLITがどの曲でも貫くこの姿勢は、グローバルな人気をつかむためにグループが重要視しているTikTokやYouTubeのためだと言っても過言ではない。ユーザーの切り抜き、編集が多いこうした動画投稿サイトでは、公開する側、観る側の両方に喜ばれる素材を提供する必要がある。となると、彼女たちの短くもインパクトのある動きはベストオブベスト(最善の中の最善)だったのだ。 さらに言うと、キャッチーなフレーズとサビを何度も繰り返すのも同じ理由からである。サウンド的にも比較的楽に切り取りができるのは、前述のサイトを意識した結果にほかならない。 サウンド、ダンス、インターネットを大切にした戦略をバランスよくスムーズにつなげたILLITが、活動を始めてから1年も経たないうちにビッグネームとなったのは、これでよく理解できたのではないだろうか。グループがデビューした2024年は、『紅白』初出場以外にも名誉な話題や記録が続いたのもうなずける。
『紅白』出場で「若者の大好きなアイドル」から「お茶の間の人気者」に?
先日、アメリカのビルボードが発表した2024年の年間チャートであるYEAR-END CHARTSを見ると、“Magnetic”が「グローバル200」で61位に、アメリカを除くグローバルチャートでは29位に入った。これは韓国のグループの楽曲では最も高い成績だったという。 また、TikTokやYouTubeといった有名なプラットフォームの年間ランキングで良い結果を出しており、特に後者のほうでは、“Magnetic”が日本国内のトップショート楽曲で5位にランクイン。10位以内に入った唯一のK-POPソングとなったが、これは彼女たちおよびマネージメントサイドの戦略が成功したことを物語っている。 おかげで、2024年末のILLITは本当に忙しそうだ。特に日韓でのスケジュールは相当ハードで、イベントのために両国の間をひんぱんに往復。『KBS 歌謡祭 Global Festival』『SBS歌謡大祭典』『ミュージックステーション SUPER LIVE』といった大型企画への参加で、音楽シーンでの存在感をますます強めていきそうである。 そして、若者の大好きなアイドルから「お茶の間の人気者」に変わるのは、『第75回NHK紅白歌合戦』がきっかけとなるのではないだろうか。 12月15日にみずほPayPayドーム福岡で開催されたK-POPの祭典『2024 MUSIC BANK GLOBAL FESTIVAL in JAPAN』に出演した彼女たちは、大きな舞台で多くのダンサーをしたがえて華麗なステージングを披露、約3万人の観客が5人の一挙手一投足に熱狂していたのが印象的だった。今回の『紅白』では、現在のパフォーマンスの魅力をよりコンパクトにわかりやすく見せる演出が予想され、ファン層が一気に広がりそうだ。 ILLITの一連の動きを見ると、2010年に日本で巻き起こった最初のK-POPブームを思い出さずにはいられない。当時はKARAと少女時代の相次ぐ日本進出が起爆剤となって、それまでは一部のリスナーに人気があるジャンルだったK-POPの大衆化が加速。さらに翌年の『第62回NHK紅白歌合戦』に初出場した両グループは、老若男女に支持される韓国出身のアイドルとして認められるようになった。ILLITも同じ道をたどっていく可能性は十二分にあるが、先輩たちと異なるのは上昇するスピードがもっと速いという点である。 ちなみにILLITは2024年4月、『SUPER REAL ME』収録曲のスピードアップバージョンで構成した『SUPER REAL ME(Sped Up)』をリリースしている。 スピードアップバージョンはTikTokなどでの需要を見込んだものであり、若者をメインターゲットとした彼女たちらしいリリースと言えるものだが、「スピードアップ」というキーワードは彼女たちの現在地を象徴しているように思えてならない。 グループにとってお茶の間の人気者への道のりは、さらに短く早く達成されるべきものなのかもしれない。メンバーたちのスピードについていくには、聴く側も休んではいられない。今後はともに高速で未来へと進む気持ちが求められそうだ。(テキスト:まつもとたくお)