デビュー1年で『紅白』出場。ILLITの活躍を語るために欠かせない「3つのポイント」
ILLITをスターダムへと押し上げた「3つの理由」
シンプルで覚えやすいグループ名は、自主的で積極的な意志=I WILLと、特別な何かを意味する代名詞=ITを合わせて作られたもの。このふたつの言葉の間に入る動詞によって自分たちは何にでもなれる、というのがILLITのコンセプトだ。 また、5人のメンバーはいずれも目の前のことに最善をつくし、あとはなりゆきに任せる「瞬間没入タイプ」だそう。これらはデビュー当時の広報用資料に紹介されていたグループのセールスポイントだが、だからこそ短期間で爆発的な人気を手に入れたと言っても、ピンとこない人が多いに違いない。では、彼女たちをスターダムへ押し上げた具体的な理由は何かといえば、やはりサウンドとダンス、戦略の独自性につきるのではないかと思う。 最近のK-POPシーンでは、NewJeansやBOYNEXTDOORといった若手を中心に「イージーリスニング」と呼ばれるサウンドを売りにしているアイドルが増えている。このキーワードを1970年代に一世を風靡したイージーリスニングと同じだと誤解するリスナーも少なからずいるだろうが、現在では主に洒落たコードを多用した落ち着いた曲調を指すケースが多い(ジャンルとしては「チルアウト」と似ているかもしれない)。 ILLITもこうした流れの中で誕生したグループだと言えるだろう。しかしながら彼女たちはほかと同じようなサウンドをやっているわけではなく、レトロフューチャー(昔の人たちが思い描いていた未来の世界)、フューチャーファンク(1970~80年代の日本のシティポップや歌謡曲などをダンスミュージックとして再構築したサウンド)といったテーマやジャンルを意識しながら、懐かしくも新しいダンスミュージックを創出している。時流に乗りながらも自分たちならではの美学を追求した点は、たくさんのライバルとの差別化に役立ったと言えよう。 わかりやすい例をあげると、初のミニアルバム『SUPER REAL ME』では、中毒性のある旋律とユニークなイントロが印象に残る“My World”、メンバーらの想像をベースにして作った“Midnight Fiction”と“Lucky Girl Syndrome”が典型的であり、次作『I’LL LIKE YOU』では、“I'll Like You”や“Pimple”、“Tick-Tack”といった愛らしいメロディが耳に残るナンバーが、グループの音楽的な方向性を明確に示しているようだ。 サウンド以上にインパクトがあったのはダンスである。デビュー曲でありグループの代表曲となった“Magnetic”であれば、磁石がくっついたり離れたりする様子を指で表現した「マグネティックダンス」、楽しく遊んでいる様子を表現した「ブンバンダンス」、メンバーらがいろいろな表情を見せる「顔チャレンジ」など、ポイントダンスと呼ばれる見どころが満載だった。 さらに“Cherish(My Love)”では、「マグネティックダンス」の手の動きがハートの形に変わって「マグネティックハートダンス」に進化。ほかにも手と頭を軽快に振るところは魔法少女が変身する様子を連想させるなど、わずかな時間でリスナーを夢中にさせる要素を詰め込み、より多くの若者を魅了している。