【肥満が原因の糖尿病治療】薬や食事、運動は対症療法に過ぎない 根本治療として「減量手術」が選択肢となる理由【専門医が解説】
急増する日本人の高度肥満
日本人は欧米人のようなBMI35を超える「高度肥満」にはなりにくいと思われています。たしかに45年前であれば、その認識は正しいと思います。 しかし近年、日本では高度肥満の割合が急増しています。成人男性の1.2%。女性の0.9%がBMI35以上といわれ、該当者は100万人と推計されています。肥満学会の調査によると、2011年と比べて3~4倍、45年前とであれば実に200倍以上増加しています。BMI25以上という「軽度肥満」が増加傾向にあるもののほぼ横ばいであるのに比べ、高度肥満は急激に増加しているのです。 日本を含めたアジア人が肥満になると、糖尿病や高血圧症、脂肪肝、閉塞性睡眠時無呼吸症候群などの病気を合併しやすくなるといわれます。これらの病気が進行すると心筋梗塞や脳梗塞、腎不全、肝硬変などから、肝臓がんのような命にかかわる病気に繋がり、生活習慣病が次々と発症する「メタボリックドミノ」が起こります。 メタボリックドミノの原因は生活習慣と肥満です。いくら合併症の対処療法をしても、根本的な原因である肥満の対策をしなければ合併症の改善は期待できません。このため減量と糖尿病治療の減量手術が治療の選択肢となってくるのです。 近年、美容外科を中心とした減量目的の脂肪吸引手術が急増しています。たしかに軽度肥満の人なら局所の脂肪を取ることで見た目の改善にはつながるでしょう。しかし、内分泌に作用するわけではないため、肥満合併疾患である高血圧や糖尿病の改善にはつながりません。 (肥満が原因の糖尿病の手術治療・後編に続く) 【プロフィール】 笠間和典(かさま・かずのり)/1990年群馬大学医学部卒業。大阪大学特殊救急部、亀田総合病院外科医長などを経て、現職。2002年、日本初の腹腔鏡下胃バイパス術による減量手術を施行。日本における減量手術の第一人者として世界中で公開手術を行なう。国際代謝外科連盟アジア太平洋部会理事長を務めるなど、国際的な評価も高い。 取材・文/岩城レイ子
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