売買されるあなたの位置情報、スマホの設定は大丈夫? 自分を守るために確認すべきことは
あなたの位置情報データにアクセスする人々
スマートフォン(スマホ)、スマートウォッチ、コンピューターが私たちの個人情報を共有しているのは明らかだが、私たちが知らず知らずのうちに秘匿性の高い情報を共有しているテクノロジーはほかにもたくさんある。 バンキングアプリには、詐欺の判断や疑わしい取引の防止に役立てるため、スマホの位置情報を追跡しているケースがあることが分かっている。ホームセキュリティーシステムは位置情報を使ってジオフェンスと呼ばれる仮想境界を設定し、特定の機能の自動化に役立てている。例えば、ジオフェンスの外に出ると自動的に在宅モードから外出モードに切り替わるといった具合だ。空港に設置されている顔認識機能内蔵カメラのデータは、空港利用者に不利益をもたらすかもしれないというセキュリティー上の懸念が提起されている。 あなたがウェブサイトをクリックしたり、クッキーに同意したり、クレジットカードで買い物をしたりすることも、“あなたのデジタル日記”として逐一書きとめられている。 米コロンビア大学ビジネススクールの計算社会科学者で、ビッグデータを使ってオンライン環境と人間の行動との関係を研究しているサンドラ・マッツ・サーフ氏は、「個々のデータは、脅威には見えないかもしれません」と言う。「けれどもこうしたデータの痕跡を組み合わると、あなたがどのような人物なのか、かなり正確に把握することができるのです」 こうしたデータは、最も高い価格で入札する人に売られる。あなたに関するデリケートな情報が、データブローカーから外国政府や法執行機関、雇用主に流れる可能性があるのだ。 デジタルプライバシーと言論の自由の擁護を目的とする非営利団体「電子フロンティア財団」に所属するセキュリティー・プライバシー活動家のソーリン・クロソウスキー氏は、「自分自身に関するデータが世界にどれだけ拡散しているのか、個人が把握することは不可能だと思います」と話す。 よからぬ者が他人の位置情報を手にすれば、潜在的な被害者を見つけて危害を加えることもできる。家庭内暴力の加害者から身を隠していた被害者が、トラッキング技術によって加害者に発見され、脅迫される事例は後を絶たない。詐欺師やハッカーは、より詳細なオンライン情報や位置情報を使って、ターゲットを絞ったフィッシング詐欺を行ったり、盗まれたIDを入手したりしている。 米国では警察の捜査に役立てるために位置情報や検索履歴データを利用することも多く、つい最近まで特定の地域にいた可能性のあるユーザーの令状を取るために利用されていた。さらに大規模なプライバシーの侵害により、女性が中絶手術を受けられなくなり、その生活や精神的な健康が危険にさらされる可能性もある(編注:日本では、2017年に最高裁判所は令状のないGPS捜査を違法とする判断を示した)。