ロシア無人攻撃機の残骸をウクライナが回収、怪しげな「ステルス技術」を解剖へ
ロシアは残骸が敵の手に渡ることで何を恐れているのか?
ロシアは当初、ステルス技術にほとんど注意を払っていなかったが、近年はこの分野での進歩を主張し、Su-57については、先行世代の戦闘機よりもレーダーシグネチャーが格段に小さいステルス戦闘機だと説明している。ロシア当局はオホートニクについても、レーダーにほぼ映らないようにする特殊な素材や塗料を使用してつくられていると述べていた。 ■残骸から何がわかるか オホートニクが撃墜されたあと、ロシア軍は墜落現場をイスカンデルで攻撃した。イスカンデルは高価で希少なミサイルであり、それをウクライナの都市に対する攻撃から転用したことは、この墜落現場が優先順位の高い目標だったことを示唆する。ロシアが西側による残骸の回収を阻止したかった理由はいくつか考えられる。 最も可能性が低いのは、NATO側によって残骸をリバースエンジニアリング(分解・解析)され、NATOの航空機に使用できるような技術を入手されるというものだ。ロシアがこの分野で先行していると本気で思っている人はいないし、仮にロシアによるSu-57の甘い評価を額面どおりに受け取っても、この戦闘機は西側の航空機よりはるかにステルス性が低いということになる。 より重要なのは、オホートニクがどの角度からの、どの波長のレーダー波に対処するように設計されていて、どのようなレーダー波ならなおレーダーで捉えられるのかを西側の技術者に知られてしまう危険だ。この情報はオホートニクのステルス性能を無効化するのに役立つかもしれない。オホートニクが比較的大型で、速度が遅く、高価なドローンであることを考え合わせれば、ステルス性が損なわれればその有用性は大幅に下がるとみられる。 さらに深刻なのは、オホートニクがロシアの次世代戦闘機の花形であるSu-57とセットで設計され、Su-57と同様のステルス素材・技術を採用している可能性が高いことだ。西側はオホートニクのステルス性がどのように機能するかを知ることができれば、Su-57対策でもかなり有用な手がかりを得られるだろう。 とはいえ、ロシアが本当に隠そうとしていることについては、もっとありそうな説明がある。それは「王様は裸」、つまり、ロシアの「ステルス技術」なるものは実際は存在しない、というものだ。