【山口発】陸でトラフグを養殖し、地域の産業に育て上げた、建設会社の多角経営
日本海に面した山口県長門市。地元に根ざした総合建設会社として、土木、建築、住宅の事業分野でインフラを支えてきた安藤建設では、バブルが始まった1985年あたりから次の時代を見据えて、多角経営を行ってきました。 陸でのトラフグの養殖をスタートさせ、現在は地元の水産業を支える規模に成長。畜産業や介護、農業と、人口減少を支えながら事業として発展させてきました。 大成功したトラフグの養殖事業を中心に、地域の建設業による地域と連携した地方創生の試みをリポートします。
「やってみよう」とすぐに動く元来の挑戦体質
1969年に設立して、長門市の住環境づくりを支えてきた安藤建設が養殖事業をスタートさせたのは、1985年のこと。バブルで建設業界は右肩上がりの時期に、なぜ、養殖事業を始めたのかーー。安藤建設代表取締役の安藤繁之さんに伺いました。
安藤「当時は、漁業が盛んで土地も足りなかった頃でした。埋め立てて港湾施設の用地を造成したところ、その用地がたまたま空いてしまったんです。ちょうどその頃、父である先代がヒラメの養殖事業に関心を持っていたので『じゃあやってみようか』と。それがスタートでした」 きっかけは偶然ですが、持ち前のバイタリティーですぐに養殖事業に着手した先代。養殖場を造るときは、建設の技術が大いに役立ちました。新たな事業を始めるためには投資が必要ですが、養殖場の建築についてはその費用を抑えることができたと言います。 安藤「私たちの本業である建設業は、地域の行政機関、そして地域で暮らす方々のご理解、ご協力をいただいてこそ成り立つ仕事です。長く地元に根を下ろして仕事を続けてきて、地元の皆さんに少しずつご理解いただき、信頼していただけたからこそ、スタートできた事業でした」
事業として成り立たせるため専門家を招き、試行錯誤
飛ぶ鳥を落とす勢いの建設業界では当時、多角経営に乗り出す会社も少なくなかったと言いますが、「何でもそうですが、続けることがやはり難しい」と安藤さんは振り返ります。 安藤「最初はヒラメ、そこからは試験養殖をいくつもやりました。サーモン、カサゴ、キジハタ、アワビ、オコゼ、ウナギ、ウマヅラハギ。きちんと収益が出せてこそ、事業として成り立つわけですが相手は生き物ですから、最終的に、しっかり安定して育ち、利益も出るトラフグにたどり着くまでは、現場ではかなり試行錯誤していましたね」