外国人が「日本の運転免許証」住所欄を“ホテル”にして取得? “合法”だが…「平等とは言い難い」国際事情
合格率は「約43%」
外免切替制度に対して「緩すぎる」という声がある理由として、冒頭で触れたように手数料が少額であることのほか、知識・技能確認(試験)が比較的容易だという事情もあるだろう。 知識確認は、パソコンで日本の交通法令などについて問われる試験で、10問中7問以上正解すれば合格できる。また日本語が分からない人でも、英語、中国語、スペイン語など24の外国語で受験が可能だ。 基本的には、知識確認に合格後、技能確認にも合格(※)することで外免切替ができるようになるが、【図】のように日本と相互協定を結んでいる29の国など(州、地域を含む。以下「国」)は、知識・技能確認が免除される。 ※ 警視庁によれば、技能確認は「知識確認に合格した後に予約しますが、数か月お待ちいただいています」とのこと 「運転免許統計(令和5年版)」によれば、外免切替の合格者数は6万6127人。一方、同期間中の申請者数は15万3949人(回答:警察庁交通局運転免許課)で、合格率は約43%となっている。
外免切替は“平等”と言えるのか
日本側から見れば、基本的に、相互協定の締結国では日本人も試験免除で現地の運転免許証を取得することができる。一方、相互協定を結んでいない国では日本のような外免切替制度を設けていない場合もあるという。アメリカの法律に詳しいタイタノ誠外国法事務弁護士は下記のように説明する。 「たとえば、日本と相互協定を結んでいないカリフォルニア州で運転免許証を取得しようとすると、現地の一般取得者と同様の手続き、費用が課されることになります。それに対して、日本では外免切替の制度を使えば、一般取得者に比べればかなり簡易的な試験を、少額の手数料で受けることができてしまいます。この点で、“平等”とは言い難いようにも思えます」 またタイタノ外国法事務弁護士は、日本のドライバーの「運転技術の高さ」についても指摘する。 「日本では、ほとんどの人が数十万円の費用をかけて自動車教習所に通い、交通ルールや運転技術についてしっかり学んだ上で運転免許証を取得しています。 他方、アメリカでは州によっては、運転免許保持者が同乗していれば仮免許で公道を走ることができるため、わざわざ自動車教習所に通う必要がありません。仮免許を取得するための筆記試験も、日本よりは難しくないと言えるでしょう。 また実技試験も、日本のような複雑なコースではなく、基本的には公道をきちんと走って駐車することができれば合格できてしまいます。手数料のほか、練習のために車を借りた友人などにガソリン代を支払ったとしても、数万円で取得できるのではないでしょうか」 訪日・在留外国人が増加している今、彼らによる事故が目立てば、日本国内からの反発が大きくなるのは必然だろう。 なお、人手不足によって外国人労働者が増加する中、警察庁は今年5月に「外国語による学科試験等の実施の拡大を始めとする外国人が円滑に運転免許を取得できる環境の整備について」との通達を発出。ここでは「円滑な外免切替の実施に向けた体制等の強化等」についても取り組むよう、求められている。
弁護士JP編集部