美輪明宏 「〈お気楽〉に生きるため、明日の朝、目が覚めなかったとしても、後悔しないと思える毎日を送ろう」
歌手、俳優の美輪明宏さんがみなさんの心を照らす、とっておきのメッセージと書をお贈りする『婦人公論』に好評連載中「美輪明宏のごきげんレッスン」。 12月号の書は「お気楽さん」です。 【美輪さんの書】美輪さんが書く「お気楽さん」 * * * * * * * ◆「なんとかなる」もの 私はこう見えて、いつもお気楽です。「なにが起きても平気」と、達観しているからかもしれません。 人生、なかなか思い通りにはいかないものです。私も、振り返ると山あり谷あり。なにをやってもうまくいかず、経済的に追い詰められ、駅や公園で寝泊まりした時期もありました。それでも、このまま人生が終わるとはまったく思いませんでした。 生きていれば誰でも、窮地に陥ることもあるはずです。そんな時は、自分を信じて、負けない心を持ち続けること。人間のエネルギーを信じなかったり、「どうせ私なんか」と自己否定的な考えを抱くと、ますますマイナスの方向に進んでしまいます。逆にプラス思考で「ケセラセラ」「なんとかなる」と思っていると、自然と運が開け、本当に「なんとかなる」ものです。
◆人生をプラスの方向に切り開くコツ 《経営の神様》とも呼ばれた松下電器産業の創業者・松下幸之助さんは、「日本人の95%は悲観論者。残りの5%の楽観論者が各界をリードしている」といったことを語っていたそうです。また、『幸福論』を書いた哲学者のアランの言葉に、「悲観主義は気分に属し、楽観主義は意志に属する」があります。やはり、意志を持って楽観主義を選ぶことが、人生をプラスの方向に切り開くコツといえそうです。 そう言うと必ず、「では、楽観的になるにはどうしたらいいのでしょう」と聞かれます。残念ながら、そんなテクニックはありません。ただひとつアドバイスするとすれば、今日一日をどう充実させて生きるかを考えることです。 たとえ明日の朝、目が覚めなかったとしても、後悔しないと思える毎日を送っていたら、明日を憂うことがなくなります。そんな毎日を積み重ねていけば、さまざまな不安もスーッと消えて「明日は明日の風が吹く」と、お気楽さんでいられますよ。 ●今月の書「お気楽さん」 (構成=篠藤ゆり、撮影=御堂義乘)
美輪明宏