「ビタミンA」が欠乏するとどうなるの?→管理栄養士「夜盲症のリスクが上昇します」 実は怖い弊害あり
健康維持のために必要不可欠である、さまざまな「栄養素」。どの栄養素にも適切な摂取量が定められており、不足時はもちろんのこと、過剰に摂取しても体に悪影響を及ぼすことが知られています。そんな身近な栄養素の摂取量について注意すべきことを、管理栄養士の岸百合恵さんに教えていただきました。今回は「ビタミンAの不足」です。 【すごい】「えっ…意外すぎる…!」 これが「実はビタミンAが特に豊富」な食べ物です!(4枚)
目の健康、粘膜を正常に保つ働き
レチノール、レチナール、レチノイン酸の総称である「ビタミンA」は、水に溶けにくく油に溶けやすい性質を持つ「脂溶性ビタミン」の一つです。植物性の食品に含まれる「β-カロテン」は必要に応じて体内でレチノールに変換され、ビタミンAとして働くため、ビタミンAの仲間に分類されます。 ビタミンAは視覚や目の健康、皮膚や粘膜を正常に保つ働きがあり、免疫系や生殖機能をはじめ、多くの臓器が適切に機能するために必要な栄養素です。主に、次のような食品に含まれます。 【植物性の食品】 基本的に、緑黄色野菜や海藻に「カロテン類」として含まれます。「緑黄色野菜」は、可食部100グラムあたり600マイクログラム以上のβカロテンが含まれる野菜を指す、ビタミンAの主要な摂取源です。特にホウレンソウやカボチャ、ニンジン、モロヘイヤなどに豊富に含まれています。 【動物性の食品】 主にレチノールとして含まれますが、動物はレチノールを肝臓に貯蔵するため、レバーや魚の肝は、含有量がケタ違いに豊富です。その他、ウナギや卵黄などにも多く含まれ、さまざまな食品から摂取できます。 「日本人の食事摂取基準」(2020年版、厚生労働省)で定められている1日のビタミンAの推奨量(1日当たりのレチノール活性当量)は、成人男性で850~900マイクログラム、成人女性で650~700マイクログラムです。妊娠中・授乳中の女性の場合、おなかの赤ちゃんの発達に必要な量、母乳で失われる量を考慮した上で、妊娠中は+80マイクログラム、授乳中は+450マイクログラムの付加量が設定されています。 ニンジンなら1本弱(150グラム)で約950マイクログラムとなり、1日分のビタミンAを摂取できます。レバニラ(1皿)なら6000~7000マイクログラムと、推奨量を大きく超えて摂取できてしまうほどです。しかし、2019年度の「国民健康・栄養調査」(厚生労働省)によると、推奨量に対し男性で300マイクログラム程度、女性で150マイクログラム程度、それぞれ不足しているとされています。 では、ビタミンAの摂取が不足した場合に考えられる弊害、悪影響とはどのようなものかご存知でしょうか。 一般的には、よほど長期にわたってビタミンAを含まない食事に偏らない限り、欠乏症を発症するような不足状態になる危険性は低いようです。それでも欠乏状態に達した場合、目の角膜のダメージにより、暗がりで視力が著しく衰える「夜盲症」を発症します。これは、発展途上国の子どもに多くみられる症状です。 また、ビタミンAが著しく不足すると、皮膚や粘膜の乾燥、子どもの場合は成長障害、妊婦の場合は早産のリスクが高くなる可能性があります。 ただ、ビタミンAは多様な食品に含まれるため、日本など先進国において不足することはまれといえるでしょう。