再選後に「“もう辞めたい”という声も」…職員30人が告白した斎藤元彦知事へ“もの言えぬ空気”とは「理不尽な異動が怖い」
斎藤県政での「もの言えぬ空気」
10月2日に放送された「クローズアップ現代」では、「もの言えぬ空気」が第一次斎藤県政では職場に蔓延していたとして、その実態を詳しく伝えている。 第一次斎藤県政では、就任1年で58の事業の廃止や見直しのほか、当時700億円かかるとされた庁舎などの再整備計画の凍結や県立大学の段階的な完全無償化を実施した。 知事が改革の司令塔として作ったのが、10人程度の幹部ら職員で構成される「新県政推進室」だった。以前は知事と各部局が個別に議論を重ねていた政策形成のプロセスを簡素化。迅速な意思決定を行えるようにした。その後、この「新県政推進室」も形式化し、“側近”と呼ばれる少数のメンバーで物事を決めていくようになったという。 「密室で取り巻きだけで決めて、どんどん進めていく」(OB職員=幹部) 「異論とか、多様な意見を別に求めているわけじゃない」(現役職員) このことが“組織の健全さを欠く事態”を招くことになった、と複数の職員が取材に明かしたという。 「敵か味方か。賛成か反対か。白黒をはっきりさせて、賛成のチームと反対に回るチームを分ける傾向があった。そうすると、いろんな意見がだんだん言いにくくなって声が届かなくなる」(OB職員=部長級) さらに人事権をちらつかされて圧力を感じたという職員もいたという。 知事が打ち出した賛否が分かれる政策に意見を述べたOB職員は、後日、県幹部から「斎藤県政に刃向かうんだったら辞表を書け。さもなくば服従しろ」と迫られた。 異論を言うと排除。異動させられてしまう。自然に知事の周囲にはイエスマンしかいなくなってしまう。知事は“裸の王様”のような立場になってしまったとOB職員(幹部)は証言した。こうしたことで職員たちは知事の言動に違和感があっても次第に声を上げられない状態に陥っていた。
「理不尽に異動させられることが怖い」
複数の職員が知事のパワハラ疑惑を見て見ぬふりをした後悔を口にした。 「(パワハラ疑惑などを)看過していたということでいえば、批判はその通りだと思う。報復というか人事の面で見られた。そういうのを見ていると管理職も声を上げにくい空気になったり、(声を上げることに)二の足を踏んでしまう。好転しないどころか悪化する」(現役幹部職員) 「人間の心の弱さ。理不尽に異動させられることが怖い。異動させられることは不名誉だし、怖い。そういうことで意見が言えなくなる。幹部が意見が言えなくなると、その部下もさらに意見が言えなくなる。こんなに危ういとは思わなかった。こんなに簡単に崩れるんだと」(現役幹部職員) 「人間の心の弱さ」という言葉が印象的だ。県庁の職員は現役であれ、OBであれ、退職後に県がらみの仕事に就くことが多いので県のトップである知事の意向に逆らうことは現実的な不利益になってしまう恐れは強いはずだ。 ある職員は“民意で選ばれた知事の意向に意見することは容易ではない”と心情を吐露した。 「何もできなかったふがいなさ。そういうものは感じるが、だからといって、じゃあ、何ができたのかといったら、根底から覆すようなことなんて本当にできなかっただろうと思う。選挙で選ばれた人が4年間はそこにいるわけだから。それは仕えないとしょうがない」(OB職員=幹部) 番組が伝えていたのは、人事権を握る行政のトップが自分の考えを押しつけるばかりで異論を許さない恐怖政治だ。周辺にいる職員たちにとっては「恐怖」でしかなかったという実態。これが現代日本の出来事なのかと思わず、背筋が寒くなってしまう。 「内部告発の“犯人探し”を徹底」兵庫県庁の職員は“特定”を恐れて顔も手も隠し…それでも「クロ現」に証言した“壮絶な背景” へ続く
水島 宏明