子どもが「ヤバい」を連発…日本人の読解力低下が止まらない理由
受験学習法・幼児教育のプロである和田秀樹さんは「みんな『普通に』日本語を読めるはずという前提が崩れてきている」と、日本人の読解力の低下に警鐘を鳴らします。和田さんの著書『5歳の壁 語彙力で手に入れる、一生ものの思考力』(小学館)から抜粋して紹介します。 【この記事の画像を見る】 ● 問題文が読めない 子どもたち 近年、子どもたちの読解力が低下していると言われています。 最近では国語以外の教科でも問題自体が「読めない」子も多く、長文の問題が処理できずに時間切れになってしまう子も増えています。 子どもたちの読解力が低下していることについて私が初めて実感したのは、20年ほど前のことでした。 当時、教科書の出版社から依頼を受けて、わかりやすい物理の学習参考書をつくっていたのですが、その際に複数の高校教師から「今の子どもは問題を読めなくなっている」という話を聞きました。それ以前の高校生であれば、物理の問題を解くときに解答がわからないとか、あるいは解答を読んでもわからないという話だったのが、「今どきの高校生は問題を読んでも、その文章の意味がわからない」というのです。 それは物理に限ったことでなく、どの科目でも問題が少し複雑になった途端に問題文の意味が理解できずに解けなくなってしまうという生徒が増えているということでした。 また、予備校の関係者たちからもこの頃から「最近の子どもはテストで問われていることから教えなければならず、指導するのが大変だ」という嘆きの声をよく聞くようになりました。
さらに当時、私はブログを書いていたのですが、その読者から「文章が長すぎる」「もっと短い文章なら読めるのに」といったコメントをいただくことがありました。もちろん本や新聞に比べれば圧倒的に短い文章でしたので、特に読者からしばしばそうした指摘を受けることが非常に気になっていました。 考えてみれば、2000年代後半というのは、若い世代が新聞を読まなくなったことが問題視され始めた時期であり、SNSが急激に世の中に浸透してきた時期でもあります。X(旧Twitter)がスタートしたのが2006年3月ですが、当時はTwitterアイドルと言われる人たちが出てきて多くのフォロワーを獲得していました。 同時に、Twitterの140字の投稿なら読めるけれども、ブログや新聞の社説の長さになると読めないという若い人が増えたことも問題視されていました。 ● 「日本語が読めない」レベルにまで 読解力が低下 それから20年近く経った現在、スマートフォンやSNSのユーザーはますます増え続けています。今では140字どころか、LINEなどでは十数字以内の短文で必要な要件だけを送り合う人も多いようです。その結果、子どもや若い世代の間で、長い文章を読めないという傾向がさらに進んでいることを実感しています。 最近はネットのニュースでも見出ししか読まない人も多く、記事の中身をきちんと読まずに自分が取りたいように解釈して、他人を中傷する人も増えています。 もはや「国語が苦手」「長い文章が読めない」といったレベルではなく、「日本語が読めない」レベルにまで読解力が低下している人も多いのではないかと感じるほどです。 近年、日本の若者の読解力が落ちているという事実は、研究者や専門家からも多数、指摘されています。 国立情報学研究所教授の新井紀子氏の『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』(東洋経済新報社)によれば、全国2万5000人規模を対象に基礎的読解力の調査を実施したところ、今の中高生の3分の1は簡単な文章を読むことができず、中高生の読解力は「危機的と言っていい」ほどのレベルになっていると言います。