子どもが「ヤバい」を連発…日本人の読解力低下が止まらない理由
● 子どもが「ヤバい」しか言わなかったら 親がしたほうがいいこととは それは中高生だけではありません。新井氏は著書の中で、小学校で算数の文章題を解けない生徒の多くが「何を聞かれているかわかる?」と聞かれても何も答えられない、という小学校教師たちの声を紹介しています。 算数のドリルは満点なのに、文章題の答案は真っ白のままという生徒も少なくないと言います。 こうした読解力の低下は、やはりまとまった量の日本語を読む機会が減っていることが主な原因でしょう。 今の子どもを取り巻く環境は、親の時代とは大きく変わり、まとまった量の文章に触れる機会が非常に少なくなっています。特にスマホの小さい画面で短い文章を読むことが日常的になると、文字情報を読み取る力が弱くなります。また、目につく見出し部分のみを流し読みするとか、短い文章しか読まなくなると、当然、情報を処理する力も下がっていきます。 さらに、今は小さな子どもでも「ヤバい」とか「キモい」などの若者言葉を発する子がいますし、どんな状況でも同じ言葉ばかり使っている子もいます。 やはり、それでは語彙が増えていきません。 子どもが同じ言葉ばかり使っていたら、たとえばその「ヤバい」はどういう意味なのか子どもに聞いてみましょう。 「気持ちが焦っている」や「危ない」「恥ずかしい」かもしれませんし、「すごい」「かっこいい」「面白い」なのかもしれません。 「その時、どんな気持ちがしたのかな。『ヤバい』じゃない言葉で言ってみようか」などと親が促しながら、「今日、幼稚園で先生にほめられたけど、みんなの前だったから少し恥ずかしかった」などのようにある程度きちんとした形で伝えられるよう、子どもの言語化力を引き出していきましょう。
● より短く、速く、効率的になった コミュニケーション 相手に自分の思いを伝える能力、相手の言いたいことを理解する能力は、人間として最低限必要なスキルです。この能力が不足していると、人との円滑なコミュニケーションが困難になり、良好な人間関係を築くことが難しくなることがあります。 最近では、日常のコミュニケーションでもタイパ(タイム・パフォーマンス)が重視され、より短く、速く、効率的なやり取りが好まれるようになりました。 LINEを送った相手からすぐに返信が戻ってこないと、「自分は何か悪いことをしたのだろうか」と不安を感じる人も増えています。特に若い世代には「即レス」しなければ相手に悪く思われるとか、長い文章を書いて相手に読ませることは失礼だという風潮があります。 より短時間で、より効率的にコミュニケーションしたい、情報を吸収したいというニーズは日本だけではなく、世界的な流れなのかもしれません。先に触れたように、多くの人がブログよりX(旧Twitter)を選ぶようになり、最近では文章より動画、そしてYouTubeも長すぎるという理由でInstagramやTikTokの方が主流になっています。 ここで問題なのは、日本式のコミュニケーションというのは、もともと効率的なものではなく、情緒的で、曖昧で、複雑なやり取りが主流だったということです。 欧米の場合は文化的な背景が異なる相手とやり取りすることも多いため、具体的な言葉や態度で明確に表現しなければ、相手に伝わりません。 そこで自分が何かを話す際にはまず主旨を明確にして結論を示し、後からその理由を説明していきます。 誰かに何かの返事をする際はまず、イエスかノーかをはっきり伝えます。 他の人の意見に対しても、「I don’t think so.(私はそうは思わない)」などのように自分の意思をきちんと表明することが求められます。 相手の価値観が自分の価値観と違うこともあるのは当たり前だという考え方が浸透しているため、価値観の違う相手に合わせなければいけないと考えることがないからです。その代わり、誤解のないように自分の考えや立場を相手に伝えるために、幼い頃からコミュニケーションの練習をしているのです。 しかし、日本人のコミュニケーションはそうではありません。