イランの美術館から30点の絵画が消失。専門家らは「政府の無関心さ」が招いた事件と非難
テヘラン市議会が発表したところによると、イランのイマーム・アリ宗教美術館から貸し出された絵画30点の行方がわからなくなった。これらの美術品は、公式文書とともにテヘラン市外の団体が開催する展覧会に貸し出されたというが、そもそも展覧会が開催されたか否かは定かではない。 市議会議員の一人は、貸し出された一つの絵画には3000億リアル(約10億円)の価値があると推測しているが、イラン政府に実際の価値を問い合わせても返答はなく、いらだちを示しながら次のようにコメントしている。 「作品が紛失された背景について調査しようとしましたが、報告書を受け取っていないだけでなく、貴重な美術品の所在について明確な回答を誰も提供してくれませんでした」 イランは長年に及ぶ経済制裁や不安定な政治によって国内の博物館や史跡の管理は行き届いておらず、世界遺産に登録されている遺跡は競売にかけられている。 イランの文化財や美術品はたびたび行方不明になっており、2013~2016年の間にはサーダバード宮殿から手織りの絨毯48枚が盗まれている。国宝に登録されているこれらの絨毯は、個人宅に移されたという目撃情報が上がっているが、真相は定かになっていない。 文化資産の紛失や不適切な取り扱いの事例が次々と明らかになるにつれ、文化財に対する政府の無関心さによって遺産が消失しているのだと批判する声が高まっている。こうしたなか、政府が文化財をの捜索を意図的に放置していると非難する声も上がっており、政府関係者がブラックマーケットで文化財を不正販売して、利益を得ているのではないかという疑いもあるようだ。 イラン政府が経済および軍事面における政策を強調し続ける一方で、歴史・文化遺産を後世のために残す責任から逃れているという意見も多く上がっており、文化活動家たちは現在、行方不明の絵画の調査と、失われた文化財の所在地の解明を要求している。