「法的処置も」阿部詩の号泣に辞退の競歩選手…パリ五輪”誹謗中傷”にJOCが異例声明の「後手ぶり」
熱戦続くパリ五輪で案の定、誹謗中傷が問題になっている――。 柔道男子60キロ級では永山竜樹が“不可解判定”で敗退。準々決勝でスペインのフランシスコ・ガルリゴスの絞め技を受けている時に主審が「待て」と言ったにもかかわらず、相手選手が攻撃をやめずに失神、一本を取られた。日本側は猛抗議したが、判定は覆らず、永山は銅メダルに終わった。 【画像多数】「号泣のウラで…」柔道・阿部詩 ″合い鍵″半同棲のお相手は8歳年上「カリスマ美容師」 ネット上では締め技を解かなかった相手選手に非難が殺到。見かねた永山は7月29日に自身のインスタグラムでガルリゴスとのツーショットを掲載し 《準々決勝に関しては、お互い必死に戦った結果なので、ガリゴス選手への誹謗中傷などは控えて頂きたいです。審判の方も判断の難しい状況だったと思います》(原文ママ) と訴えた。 同じく柔道ではまさかの2回戦敗退で取り乱す女子52キロ級・阿部詩の姿が物議を醸した。 畳を降りた阿部は悲鳴にも似た声を上げ、号泣。スタンドからは「ウタコール」が巻き起こり、自身の力で歩けない阿部はコーチの肩を借りて退場した。 その光景を「感動」とみるかどうかで、反応が分かれた――。 朝の情報番組に出演している石原良純は 「これを含めてこれが努力の甲斐、3年間の戦いの甲斐。時に勝負だから残酷なところもあるけど、僕はこういう姿もオリンピックの1ページだなって。まだ始まったばかりだけどもしかしたらこのシーンが今回のオリンピックで一番印象に残るシーンなのかもしれない」 と述べた。 一方、元宮崎県知事の東国原英夫氏はXで 《やはりあの態度(大声で泣きじゃくり試合進行を妨げていた)は武道家・柔道家として如何なものか》 と投稿。フォロワーから 《泣いてはダメなのか?》 と問われ 《全く構わない。感情表現も構わない。但し場所というものがある。試合進行を妨げて迄やるべき事では無い》 とつづった。 ネット上でも阿部の涙に 《もらい泣きしました》 という声から、 《あれはドン引き》 《みっともない》 という声までさまざまな反応が寄せられている。 スポーツ紙五輪担当記者は 「前回の東京五輪でもそうでしたが、国の期待を背負っている選手には誹謗中傷が集まりやすい。選手強化のために税金が使われていることも大きいのでしょう。 日本はまだマシなほうで、海外ではミスした選手に殺害予告が届くこともしばしば。どんなに注意を促しても中傷はなくならないので、五輪期間中はSNSアカウントを凍結する選手が増えています」 と話す。 時には取材するメディア関係者にも、相手国の関係者と思しき人物から罵詈雑言を浴びせられることがある。現地で取材する別のスポーツ紙記者は 「阿部詩選手が負けたあと、私の目の前で泣きマネのジェスチャーをする人がいました」 と明かす。 女子20キロ競歩への出場を辞退した岡田久美子(富士通)、柳井綾音(立命館大学)もネットの悪意にさらされている。 日本陸上競技連盟は辞退理由について「男女混合競歩リレーに専念するため」と説明。柳井選手は発表後、自身のXで 《今回の20kmWの辞退の件ですが、たくさんの方から厳しい言葉に傷つきました》 《試合前は余計神経質になり、繊細な心になります。批判ではなく応援が私たち選手にとって力になります。批判は選手を傷つけます。このようなことが少しでも減って欲しいと願っています》 とつづっている。男女混合リレーは8月7日に行われる。 このほか、なす術なく初戦で敗退した男女テニスの錦織圭、大坂なおみ、メダル候補といわれながら北朝鮮ペアに完敗した卓球混合ダブルスの張本智和&早田ひなにも心無い声が飛んだ。 「近年は度を超す誹謗中傷に対しては発信者の開示請求をすることができる。大事なのは、それを選手個人ではなく、JOC(日本オリンピック委員会)や各協会側が毅然と対応すること。 誹謗中傷についてはJOCが水面下でモニタリングはしているそうなので、度が過ぎる投稿には法的措置も検討する時期に来ているのではないでしょうか。そのためにJOCや協会が存在するわけですから、選手が競技に集中するためにも、もっと積極的に対策をとるべきでしょう」(前出・スポーツ紙記者) そこで本誌は7月30日にJOC広報宛てに「選手個人に対する悪質な誹謗中傷に対し法的処置をとる可能性」や「モニタリングの有無」などいくつかの質問事項を送ったところ、個別に返答はなかったものの、8月1日になってJOCは「TEAM JAPANからのメッセージ」として、 《応援いただく皆さまには、誹謗中傷などを拡散することなく、SNS等での投稿に際しては、マナーを守っていただきますよう改めてお願い申し上げます。なお、侮辱、脅迫などの行き過ぎた内容に対しては、警察への通報や法的措置も検討いたします》 と、大会中としては異例の声明を発表。やっと重い腰を上げた格好だ。 SNS社会となり、選手の「メンタルヘルス」の重要度は年々増している。競技に集中するためにもJOCや各協会の対策は大事だが、何より問われているのは、個人のモラルなのを忘れてはならない――。
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