オーストラリアで16歳未満のSNS禁止法案 国民は賛成多数 各国規制は法的ハードルも
豪州政治に詳しい神奈川大の杉田弘也教授は、「法案は政権が問題に向き合い、国民の声に耳を傾ける姿勢を示すもの」と指摘する。豪州では、米英で人気の「性差別主義者」を名乗るインフルエンサーが流行するなど、同じ英語圏の過激なコンテンツ流入に保護者や教員が危機感を募らせているという。
また、杉田氏は豪州がこれまでも「世界初の実験的な政策」を実行してきた成功体験も影響しているとみる。2018年には、世界に先駆けて、第5世代(5G)移動通信システムに関する技術開発で中国IT大手の華為技術(ファーウェイ)を排除した。
■各国で進む規制
未成年へのSNS規制は世界的な流れでもある。
全米州議会会議の今月22日の集計によると、全米各州で少なくとも50件の規制法が成立。東部ニューヨーク州は6月、中毒性のある投稿をアルゴリズムを使って表示するSNSアプリを18歳未満が利用する場合、運営企業とアプリストアに保護者の同意を義務付ける法律を可決した。
英国では昨年、SNSと検索エンジンの運営企業に有害なコンテンツへの未成年者のアクセス防止策を求める「オンライン安全法」が成立。25年下半期に施行予定で、規制当局は企業にアルゴリズム再構築などで有害コンテンツ表示を防ぐことなどを求めている。カナダやノルウェーなども規制強化へと動いている。
各国での規制強化の流れを受け、運営企業は子供用アカウントや保護者の管理機能強化など対策を打ち出す動きもある。
ただ、米IT大手が加盟する業界団体ネットチョイスは、各州でのSNS規制に対して「言論の自由を侵害しており違憲」とする訴訟を提起した。同訴訟を受け、西部ユタ州の規制法は施行直前に連邦地裁から差し止められた。今後、各国での規制拡大に企業側が抵抗する動きが強まる可能性もある。