レゴリスから金属を抽出する「イオン液体」数十万の候補から6種類を機械学習で選別
月や火星に基地を建設する際、コストを抑える理想的な方法は建材の現地調達です。しかし、地球で広く行われている建材の製造や加工方法を月や火星で実行することは困難です。 今日の宇宙画像 ワシントン州立大学のAzmain F. Islam氏とSoumik Banerjee氏の研究チームは、岩石から金属元素を溶かし出し、3Dプリンターで印刷することも可能にする「イオン液体」についてシミュレーションを行い、月や火星のレゴリスに最適なイオン液体の選別を行いました。その結果、数十万もの候補から、最適と思われる6種類を選別することができました。候補を事前に絞ることで、今後の実証研究に生かされる可能性があります。
■月や火星で建材を調達する困難さは長年の課題
月や火星の研究をするにあたって一番理想的なのは、人間が月や火星に長期間滞在できる環境であり、その実現には人が恒久的に暮らせる基地を作る必要があります。基地を建設するのに必要な建材を地球から輸送すると極めて高いコストがかかるため、現地の岩石を加工して建材を作ることが理想的であり、その最適な方法を探る研究が続けられています。 月や火星の表面にある岩石は、微小隕石や太陽風などの作用によって非常に細かくて鋭い形状をした「レゴリス」という砂状の物質になっています。レゴリスを固めてレンガのように加工・使用する方法は最も簡単ですが、より頑丈で複雑な建造物を作るには、金属の骨組みなどが求められます。そのような建材を作るには、レゴリスから金属元素を抽出する必要があります。 地球上では岩石を高熱で融かす、電気分解を行う、他の物質と混ぜ合わせるなどの方法で金属元素だけを抽出することが一般的に行われています。しかし月や火星では熱や電力を発生させるためのエネルギーや、混ぜ合わせるための物質の調達が困難です。エネルギーをほとんど必要としない方法もありますが、多くの方法では月や火星において貴重な資源である大量の水が必要となるため、やはり実行することは困難です。