米国に好かれるソフトバンク孫正義と嫌われる日本製鉄、「交渉術」の決定的な差
● 孫氏の恐るべき狙い トランプ氏を支持者に変えたワケ 冒頭の、孫氏とトランプ氏の会談に戻りましょう。孫氏の真の狙いは何だったのでしょうか? それは、SBGがAIの強者連合に加わるのを認めてもらうことだったはずです。トランプ氏からのお墨付きは、孫氏にとってまさに値千金です。 SBGがテクノロジー分野でグローバルなポジションを確立するには、米国における主要プレーヤーになることが欠かせません。しかし、それには米国の政治や独占禁止法との戦いが付いて回ります。というか、これまで何度も振り回されてきました。 代表的なのが、孫氏が米携帯キャリア4位のスプリントと3位のTモバイルを合併しようとした際、18年4月に合併に合意したものの、米規制当局の承認や州政府による差し止め訴訟の影響で、その実現には2年もの歳月がかかったことです。 また、孫氏は20年に、A I向け半導体の米エヌビディアに対して、SBG傘下の半導体設計会社・英アームを売却する契約を交わしました。この契約によってSBGはエヌビディアの株を8%持つ大株主になるはずだったのですが、米英の独禁法当局の反対が長引き、22年に断念しています。 孫氏はAI分野で天下を取るという野望を、邪魔する存在になりかねないトランプ氏を、いち早く味方に付けることができました。しかしそれは、小手先の技などではなく、まして運が良かっただけというわけでもなく、長年の苦労や努力が実を結んだ結果だったのです。 日本製鉄は今まさに、政治やさまざまな利害関係者との交渉に悪戦苦闘している最中です。バイデン大統領は15日以内に最終判断を下すことになり、それまでは目が離せません。
三木雄信