「ある意味、社会的責任」。旧富士通のシニア向けスマホがレノボ傘下で続く理由
日本のユーザーに長年愛されてきたシニア向けスマートフォンが、将来的に海外へ「逆輸入」される可能性もある。 【全画像をみる】「ある意味、社会的責任」。旧富士通のシニア向けスマホがレノボ傘下で続く理由 FCNTは10月31日、「らくらくスマートフォン」シリーズから新たに3機種を発表した。 FCNTは富士通の携帯通信事業が、2021年4月にポラリスグループに事業移管され発足。しかし、2023年5月に経営破たんし、同年10月に中国・レノボグループの傘下に入った。その後、事業を再開してから、らくらくシリーズでは初の新機種発表となった。 新体制となってもなお「らくらくスマートフォン」の開発が続く背景には、デジタル化が進む社会でスマホの操作に不安を抱える高齢者の存在がある。 FCNTの桑山泰明副社長は、31日の発表会で「らくらくスマホは社会的責任に近い」と話し、その意義を語った。
ラインアップの拡大に加えて販路も拡充
今回発表になった「らくらくスマートフォン F-53E」は、NTTドコモから2025年1月下旬に発売される。約5.4インチと従来機に比べ大きくなったディスプレイや、5030万画素のカメラ、チップセットはクアルコム製「Snapdragon 6 Gen 3」を備える。 また、FCNTとしては初めてソフトバンクと連携。サブブランド「ワイモバイル」から「らくらくスマートフォン a」を11月7日に発売する。12月6日には同シリーズ初の公開市場向け端末「らくらくスマートフォン Lite MR01」も発売する。 らくらくスマートフォンの特徴は、基本的な機能が大きく表示されたシンプルなホーム画面と、ディスプレイ下部に設置されたホームボタンだ。 新機種でもこうした使い勝手は実現されている。
開発の継続が危ぶまれたシニア層向けスマホ
シニア層をメインターゲットとした「らくらくスマートフォン」は、2012年に富士通が初代モデル「らくらくスマートフォン F-12D」をNTTドコモから発売。それ以降も新機種が継続的に発表され、累計販売台数は約900万台になる。 フィーチャーフォンの「らくらくホン」まで含めるとその歴史は20年以上になり、累計販売台数は約4000万台に上る。 しかし2023年5月に、開発の継続に暗雲が立ち込める。 FCNTが経営破たんし、携帯端末の製造・販売事業について「スポンサー支援の意向が表明されていない中での事業継続は極めて困難」と発表したからだ。 その後、中国・レノボグループによる出資が決まり、2023年10月に「FCNT合同会社」として新体制で事業を再開。約1年の期間を経て今回の新機種発表に至った。
松本和大