原田知世×川谷絵音 相思相愛の二人が語る「優美」なコラボレーションの背景
昨年、ラブソングカバーシリーズの第4弾となる『恋愛小説4~音楽飛行』で、ザ・ビートルズやニール・ヤングなど洋楽をカバーした原田知世が、早くも6曲入りのミニアルバム『カリン』を11月27日にリリースする。 【画像を見る】原田知世 最新アーティスト写真(全3点) 冬をテーマに全曲新曲で構成された本作は、20年近くにわたり原田の大切な音楽的パートナーである伊藤ゴローが総合プロデュースを担当。伊藤に加え、pupaをはじめ長年の音楽仲間である高野寛や、近年の歌詞世界に欠かせない高橋久美子、今回が初タッグとなる藤原さくら、soraya(壷阪健登+石川紅奈)が参加。すみわたる冬の空気のような原田の歌声に彩りを与えている。 今回Rolling Stone Japanでは、「ヴァイオレット」に続く2度目のコラボ曲「カトレア」を本作に提供した川谷絵音と原田の対談を実施。そもそもの出会いから実際の制作プロセス、最近二人が夢中になっていることなど、ざっくばらんに話し合ってもらった。
姪っ子がもたらした出会い
─川谷さんとのコラボは今回で2回目ですが、そもそものきっかけを改めて聞かせてもらえますか? 原田:きっかけは『fruitful days』(2022年)というアルバムを作るときでした。いつも私は伊藤ゴローさんにトータルプロデュースをお願いしているのですが、誰か新しい方にも曲作りから参加してもらうのはどうか?という話になって。それで「誰がいいかな」と考えていた時に、当時10代だった姪っ子にも「誰かおすすめの方はいる?」って相談してみたんです。そうしたら、「絶対に川谷絵音さんに曲を書いてもらうといい!」と熱く言われて(笑)。姪はindigo la Endが大好きで、「知世さんの歌声と川谷さんの音楽は絶対合うと思う」と言って、indigo la Endの好きな曲をいくつかセレクトしてくれました。 川谷:その話を以前うかがって、すごく嬉しかったです。僕の中で知世さんは、「スクリーンの中の人」というイメージでしたし、まさかご一緒できるとは思っていなかったので。自分が始めたバンドindigo la Endが、こんな素敵なご縁を繋いでくれたという意味でも感慨深いものがありました。 ─最初のコラボ曲「ヴァイオレット」はどのように作っていったのですか? 川谷:もともとは『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』というアニメを見ながら、誰に頼まれたわけでもなく勝手にイメージソングを作ろうと思ったんです(笑)。部屋で弾き語りをしているときにサビのメロディが浮かんで、なんとなく「ヴァイオレット」という言葉もその時に出てきていました。indigo la Endのレパートリーに加えようかと思ったのですが、「自分が歌う感じではないかな?」と迷っていたんですよね。そんなときにオファーをいただき、「これは知世さんが歌ったら絶対いい曲になる」と感じて、そこから本格的に作り始めました。 ─制作に入る前に、何か打ち合わせなどはありましたか? 原田:初めてお話ししたのはオンライン上でした。ゴローさん含め、「川谷さんに全部お任せしたい」という気持ちでこちらは一致していましたね。私、絵音さんのミックスボイスがとても好きなんですよ。ちょうど自分も「ミックスボイスをうまく使いこなせたらいいな」と思っていたところで、「どうやったらあんなふうに歌えるんですか?」とそのときの打ち合わせで尋ねた気がします。 川谷:はい、そんな話をした記憶がありますね。 ─オンライン上でお話しされたとき、原田さんに対する印象はどうでしたか? 川谷:いや、イメージそのままというか、本当に変わらない感じでしたね。今回のコラボ曲のタイトルであるカトレアの花言葉が「優美」なんですが、まさにそれがぴったりだなと思いました。 ─原田さんに曲を書くにあたり、過去の作品を聞いて参考にされたりしました? 川谷:めちゃくちゃ聴きました(笑)。キーとか「どの音域が合うのかな?」とか色々考えながら作っています。「ヴァイオレット」のときも、キーを一度下げるか迷って結局元に戻したんですよね? 原田:最初は「ちょっと高すぎるかな?」と思って半音下げてみたのですが、結局川谷さんが送ってくれたデモのキーが一番しっくりきました。さすがですよね。思えば10代の頃は、キーの高い曲をよく歌っていました。今聴き返してみると未熟な部分もたくさん感じますが、その瞬間にしか出せない「きらめき」みたいなものもあって。それを川谷さんの「ヴァイオレット」で、少し思い出したというか。 ここ数年、ゴローさんと作る曲ではわりと落ち着いた声で歌うスタイルが多いので、声を張り上げることもあまりありません。そんななか、川谷さんの楽曲と出会ったことで、昔の自分の歌い方や声のニュアンスも思い出しつつ、これまでの自分とはまた違った新しい一面が引き出されたような気がします。 川谷:逆に「カトレア」は、「ヴァイオレット」とは違う感じにしたかったんですよ。低い声も聴いてみたいなと思って結構限界までチャレンジしました。しかも「ヴァイオレット」は音が長めの曲だったのに対し、「カトレア」では音数を少し多めにしたので難易度も上がったかなと。 原田:そうなんです。リズムに乗せるとき、ちょっとでも雑念が入るとついていけなくなって「あーっ!」ってなります(笑)。家でずっと練習していて、姪っ子がよくindigo la Endをカラオケで上手に歌うので、参考にしたりもしました。「ちょっと一回『カトレア』歌ってみて」と頼んだら、「ここの歌い回しは軽めでいいかも」とかいろいろアドバイスをもらって、「川谷さんの攻略法」みたいに歌の指導をしてくれて、すごく助かりました。 ─心強いですね。姪っ子さんは今回コーラスも担当したとか(※「SARA」名義でクレジット)。 原田:はい。「ヴァイオレット」のときは、レコーディングと学校の予定が合わなくてコーラスに参加できなかったのですが、今回は「絶対参加したい!」と言っていました。チャンスが来たので「やってみてくれる?」と頼んだら、喜んで引き受けてくれました。イントロ部分で彼女が一人で歌うパートがあるのですが、「録ったけど、使われるかどうかは川谷さん次第だからね」と言っていたんです。完成品を聴いたときには、「こんなに幸せなことはない!」と感激していました。彼女との素敵な思い出が、川谷さんの曲と一緒に残っていくのが嬉しいですね。 ─姪っ子さんは、川谷さんと実際にもお会いしているのですか? 原田:ライブに行かせていただいて、ご挨拶をさせていただきました。その後も2回か3回、一緒にライブに行っています。(今年4月の)NHKホールも行きましたし。今年は2回……私は1回撮影で行けなかったんですけど、家族が姉と甥っ子と行きました。 川谷:ありがとうございます、本当に嬉しいです。