原田知世×川谷絵音 相思相愛の二人が語る「優美」なコラボレーションの背景
『カリン』について、マイブームとこれからの話
─EP『カリン』についても少しお聞かせください。川谷さんはどんな印象を持たれましたか? 川谷:sorayaさんの提供曲「セレンディピティ」を聴いて、sorayaさんをすごく好きになりました。今まで知らなかったんですが、彼らの音楽は僕とは全然違うアプローチで刺激になりましたね。原田さんの作品は、普段自分が関わる作品にはない温かさや優しさがいつもあって、自分も年齢を重ねる中でこういった温かい作品を作りたいなと思いました。 原田:sorayaさんはディレクターさんが紹介してくださったんです。アルバムを聴いてみて、とても素敵だったので、お願いしたいと思いました。実際、sorayaさんの曲も川谷さんの曲も難しくて、とにかくずっと練習していた記憶があります(笑)。聴くと心地よいんですけど、いざ歌ってみると「え、こんなに複雑な曲なの?」と驚かされる。でも、完成品を聴くとそう感じさせない懐かしさがあって、なんとも言えない魅力を感じますね。 ─絵音さんの曲も含めて、難易度の高い曲にあえて挑戦されているところはありますか? 原田:「苦しいけれど、楽しい」という感じです。音楽だけでなくいろいろな側面で、毎年自分が少しずつ変化しているのを感じていて。去年にはなかった自分の一面が、今回の作品で見えたなという発見があるんですよね。だからこそ新しいチャレンジを楽しめるんです。 前回のインタビューでもお話しましたが、私は10代から音楽を始めて40周年を迎えたところで、一度すべてを置いて「これからはもっと自由に生きよう」と思いました。なので、「自分はこういう人間だ」と今は決めつけないようにしていて、「全然違うこともできるよ?」と自分に言い聞かせています。とにかく伸び伸びやるのが一番ですね。 ─原田さんがいつまでも素敵な理由がわかったような気がします。川谷さんも常に新しいことに挑戦されているように思います。 川谷:そうですね。楽曲提供のオファーとかでよく「indigo la Endの、昔のあの曲の感じでお願いします」みたいに言われることが多いんですが、それをそのままやるのはあまり好きではなくて。やはり自分が成長していないと曲作りに意味がないと思っているので、案件であれ毎回新しい要素をどこかに取り入れるようにしています。たまにやりすぎて修正が入ることもありますが(笑)。 「カトレア」でもそうした挑戦があったからこそ、レコーディング時に細かいところが気になってしまって、時間がかかったんだと思いますね。人はどうしても楽な方に流れがちですが、それを避けて挑戦を続けることが今回特に大切だと感じました。いい機会をいただけたと思っています。 ─ところで、お二人は最近新たに始めたことや、夢中になっていることはありますか? 川谷:いやー、本当に時間がなくてインプットが全然できないんですよね。でも唯一、Netflixでやっていた『ボーイフレンド』という男性同士の恋愛リアリティショーがあって、それにはめちゃくちゃハマりました。何度も見返していますね。 恋愛リアリティショーって、誰でも恋愛に共感できるから、「僕ならこうするのに」とか「なんでそうしないんだよ」っておせっかいな気持ちで楽しむ部分があるじゃないですか。それがいき過ぎると炎上してしまうこともあるわけですけど。でも『ボーイフレンド』だと、男性同士の恋愛という自分にとっては未知の部分が多くて、男女の恋愛を見ているときのような変な共感がなくて、逆にフラットに楽しめるんです。そこが今までの恋愛リアリティショーとは全然違うなと。 原田:へえ! 川谷:僕、映画とかでもあまり泣かないんですけど、5話くらいでめっちゃ泣いちゃいましたね。 原田:それは見てみたくなりますね。 ─以前のインタビューで川谷さんは、「体力作りをしたい。でもゴルフだけは絶対やりたくない」とおっしゃっていましたよね。 川谷:あははは。そうでしたね。周りでゴルフやっている人に変わった人が多くて(笑)。ゴルフが良いってことは知っているんですけど、なんとなく始めるきっかけがなかったという感じでした。 原田:私、50歳からゴルフを始めたんです。若い頃は川谷さんと同じで「ゴルフだけはやらないだろうな」って思っていたんですけど(笑)、やり始めると本当に面白くて。今、ボーカルの練習でいろいろ研究しているのと、ゴルフのレッスンってすごく似ているんですよね。メンタルが大きく影響するし、自分にしかわからない変化を楽しんだり、自分と向き合う面白さがあったりして、おばあちゃんになっても続けたいと思っています。 もちろん時間はかかるし、途中で「もうやりたくない!」って思うこともあるのですが、ある日突然「あれ、できるかも?」って思う瞬間があって、自分の体の変化に気づくのが面白いですね。仕事の合間があれば練習に行くようにしていて、練習中は他のことを一切考えられないので、忙しいときほど良いリフレッシュになります。常に考え事をしてしまうので、リセットするのにとても役立っていると感じます。 ─川谷さんも、50歳になったらやりましょうか。 川谷:できれば、もう少し前から始めたいですね(笑)。 原田:私ももっと若い頃から始めれば良かったと思っているので、早い方がいいですよ。この間久しぶりに少し時間ができて練習したのですが、家でもYouTubeで上手な人の動画を見てイメージトレーニングをしています。特に韓国の女子ゴルファーの動画を見て研究しているのですが、見ているだけでも少しずつイメージと体がつながってきて不思議と動きが掴めるようになるんですよね。それと同じように、昭和時代のいろんな歌を聴いたり、同じ曲のいろんな人のカバーを聴き比べたりもしています。そうやって勉強するのが楽しいんです。 ─もしお二人でまたコラボするとしたら、どんな曲をやってみたいですか? 川谷:僕は、ミニマムなダンスミュージックを作りたいと思っています。例えばロミーのような、ミニマムで少し暗い感じのダンスミュージックが、知世さんにすごく合うんじゃないかなと勝手に思っていて。 原田:ぜひ、お願いしたいです。実は今日、とても緊張していたんですよ、これまで対談の経験があまりなかったので。でも本当に楽しかったです。いつかゆっくりお話ししたいと思っていたので、貴重な機会をありがとうございます。 川谷:こちらこそ、ありがとうございました。 --- 原田知世 『カリン』 2023年11月27日(水)リリース L’ULTIMO BACIO Anno 24 『カリン』リリース記念 原田知世 Special Live 2024年12月17日(火)恵比寿The Garden Hall 開場 18:00 / 開演 19:00 ※チケットはソールドアウト
Takanori Kuroda