米、ウクライナに対人地雷供与容認か 人権団体から批判も 米報道
米紙ワシントン・ポストは19日、バイデン米大統領がロシアの侵攻を受けるウクライナに対し、対人地雷の供与を認めたと報じた。ロシアが攻勢を強めるウクライナ東部での戦闘のテコ入れを図る狙いがある。ただウクライナは対人地雷禁止条約(オタワ条約)に加盟しており、人権団体からは批判の声が上がっているという。 【図解】地対地ミサイル「ATACMS」 どんなミサイル? 報道によると、供与されるのは「非永続型」と呼ばれる種類で、一定期間後に電池が切れるなどして使用できなくなる。またウクライナ側は、人口密集地で使用しないことも約束しているという。バイデン氏は当初、供与に消極的だったが、最近のウクライナ東部におけるロシア軍の攻勢を強く懸念。早期停戦に意欲を見せるトランプ前大統領の返り咲きが決まったことも、決断の背景にあるとみられる。 当局者は「米国防総省は、対人地雷の供与はロシア軍の前進を遅らせるためにバイデン政権ができる最も有効な手段の一つだと考えている」と説明した。バイデン政権は、適切に使用されればオタワ条約の違反とはならない、地上設置型でオペレーターが起爆させる「クレイモア地雷」は既に供与している。 国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)の担当者はワシントン・ポストに対し、非永続型の地雷であっても、民間人にとって危険で、複雑な除去作業が必要とされ、確実に不活化できるわけではないと指摘。その上で、バイデン政権の決定を「衝撃的で、壊滅的な展開だ」と批判した。 対人地雷の使用、所持、生産、移転などを禁止するオタワ条約は、日本など160以上の国・地域が加盟している。米国やロシアは加盟していない。バイデン政権は2022年、対人地雷の使用を朝鮮半島に限定すると発表し、「被害を軽減するため、世界のリーダーとして米国の役割を果たしていく」などと強調していた。【ワシントン松井聡】