軽井沢のビジネスチャンスはシリコンバレー以上!日本の地方に見る唯一無二の強みとは?
● 軽井沢とシリコンバレー リモートワークするならどっちが正解? ところで、少し違った文脈で地方のビジネスチャンスとして注目されるのが、リモートワークの普及による移住者の増加だろう。 コロナ禍をきっかけに、多くの会社がリモートワークを取り入れるようになった。小さな子どもがいる家庭では子育てをしながら働けるし、さまざまな事情やライフスタイルに合わせたフレキシブルな働き方が可能になる。ただしデメリットもあって、社員同士がたまに顔を合わせて、ピザでも食べながら議論することで生まれるチームワークや発想というものがなくなってしまう。 こうしたことも考えて、ペイパルの場合、職種によって基準は変わるものの、従業員には勤務日のうちだいたい2~3割はオフィスに出てくるように求めている。いわば、リアルとリモートのハイブリットという形だ。そうなると、必然的にある程度、東京に通える距離に住むことが現実的な選択肢になる。実際、遠方に住んでいる従業員といっても、神奈川県の逗子や小田原、あるいは茨城県あたりまでの範囲に収まるようだ。 中には100%リモートで構わないという企業もあるが、ペイパルと同じようなハイブリットなルールを設けている企業が多いのではないか。そうなると、今後は東京や大阪といった大都市にぎりぎり通えるくらいの距離にあり、家賃が安くて自然が豊かな地域でリモートワーカーが増えていくと予想できる。不動産などの物件や、飲食や娯楽などの産業も、そうした人たちに向けたものが成長していくのではないだろうか。 ここでも、日本特有の強みがある。それは、鉄道網が非常によく発達していることだ。新幹線に乗れば軽井沢駅から1時間ほどで東京駅に着くから、多少遠くに住んでいても大して不便はない。 もし、同じことをシリコンバレーでやろうとしたら、ハイウェーの交通渋滞につかまって、身動きが取れなくなってしまうだろう。だから米国では、企業の本社ごと地方に拠点を移すようなことが行われている。日本は、ハイブリッドなワークスタイルに適した環境が整った、稀有な国なのだ。 ちなみに、軽井沢は地価や家賃が上がっているが、それでもまだ比較的安いと思う。ちょうど我が家でもこの前、地方の物件を調べてみたのだが、東京定住派の妻との間で協議が必要になりそうだ。 繰り返すが、日本の地方はビジネスのポテンシャルが高い。これにはペイパルも着目していて、多くの地方銀行と連携することで、地方のユーザーをサポートしようとしている。クレジットカードを使わずに銀行の口座振替で決済ができるサービスは、これまで大手都市銀行のみに対応していたが、全国の地方銀行を含む300以上の金融機関に拡大した。地方では、多くの人がその土地に根づいた地方銀行をメインバンクとして使っている。ペイパルの決済サービスを使ってもらうことで、地方の経済成長に貢献していきたい。
ピーター・ケネバン