全国自治体ユニーク部署いろいろ 元祖「すぐやる課」は設立45周年
発足以来市長直属だった「すぐやる課」は、昨年度から総合政策部の管轄となったが、実務に変化はないそう。「緊急性の高い項目の処理が主なので、その日のうちに駆けつけるという基本は同じです」(山野さん)。市民の不安や不満の解消に率先して汗を流すのが行政の原点なら、「すぐやる課」はその象徴だ。「市民の方々がどんなことに困り、何を望んでいるかを肌で感じるポジション。案件によっては他部署への橋渡し役となるだけに、組織全体を俯瞰する視点も必要です」と山野さん。安孫子さんも「県外からの問い合わせも、ここに入ることが多いんです。やはり松戸市のシンボルなのかな、と」 前述のように一時300を超えた全国の「すぐやる課」は、その多くが廃止されたが、近年、新設例も増えている。「スピード感をもって」が流行の時代だからこそ、「すぐやる精神」が再評価されるのかもしれない。「ありがとうの言葉を直にいただけるのが、大きなやりがいです」と安孫子さんも山野さんも声を揃える。
他にもいろいろある、全国自治体のユニーク部署
以下に、他自治体のユニークな部署を紹介しよう。 松戸市のお隣、東京・葛飾区では2010年に「すぐやる担当課」が発足、昨年「すぐやる課」に名称変更した。「お役所仕事のイメージを払拭するため」課員は現場に急行、応急処置や対応部署への取り次ぎを行う。一方、2003年に「すぐやる課」を設置した世田谷区は「区役所全体に、すぐやる精神を受け継ぐ」として12年に廃止。以後、5つの支所に「すぐやる相談窓口」を開設、イメージキャラクターの「すぐやるくん」も健在だ。 埼玉県寄居町の「すぐやる課」は「すぐ聞く・すぐ行く・すぐ対応」をモットーに各部署と連携する受付窓口だ。広島県では安芸高田市が各支所の「すぐやる係」を建設課維持係と併せて再編。今春から建設部に「すぐやる課」を設け、現地性の高いサービスに努めている。さらに南の沖縄県石垣市は2010年に「すぐやる課」を設置。ハブの駆除など月200件ほどの処理にあたり、昨年から「施設管理・すぐやる課」としてリスタートしている。 「すぐやる前に、よく聞くことが大切」の精神で1991年に「すぐきく係」を設け、要望などの窓口を一元化したのは千葉県習志野市。2012年から「広報すぐきく課」として、担当部署不明の相談ごと、電話やメールでの相談と併せてHPを通じた情報発信を担当する。 北海道札幌市と北見市、千葉県船橋市には「市民の声を聞く課」がある。市政全般の意見聴取や相談ごとのほか、札幌市では弁護士や税理士など専門家によるアドバイス。北見市はパブリックコメントの募集・検討。船橋は市民のモニター調査も担当している。こうした姿勢をよりカジュアルにしたのが芦屋市の「お困りです課」。市民とのパイプ役として離婚・相続・債務整理など専門家による相談も受け付けている(調停中の案件は不可)。 福島県いわき市には部署横断的プロジェクトの「見せる課」がある。原発事故の風評被害対策として2011年10月に発足した「いわき農産物 見える化プロジェクト」を発展させ、農地や農産物の検査体制を整備。データをすべて開示して消費者の不安払拭に努める。「見せる」対象は水産物や観光にも広がり、自ら企画した農場バスツアーの様子をドキュメンタリー風に公開するなど、全方位から復興の様子を伝えている。