「知らなかった」「不便になる」 全国交通系ICカードの決済が廃止 観光客、利用者からは不満の声も 目立った混乱なし 熊本県内バスと電鉄電車
熊本県内で路線バスと熊本電鉄電車を運行する5事業者は16日、Suica(スイカ)をはじめとする全国交通系ICカードの使用を全国で初めて廃止した。機器更新の費用が大きいため。事業者によると、目立った混乱はなかったが、観光客や県内の利用者からは「今日から始まるなんて知らなかった」「不便になる」と困惑する声も聞かれた。 5社はいずれも熊本市に本社を置く九州産交バス、産交バス、熊本電気鉄道、熊本バス、熊本都市バス。来年3月上旬に代替手段として、クレジットカードなどによるタッチ決済を導入するまでの間、原則として現金か地域限定型の交通系ICカード「くまモンのICカード」での決済に限られる。 熊本空港のリムジンバス乗り場では、九州産交バスのスタッフ4人が全国ICカードの使用廃止を周知するボードを掲げて案内した。札幌市から旅行で訪れた男性会社員(50)は「熊本に来るまで知らなかった。滞在中、バスに乗ることも多くなるので不便になる」と困惑した様子だった。
リムジンバスでは、クレカでタッチ決済ができる。出張で東京から訪れた男性会社員(61)は「クレカが使えるなら、そこまで不便は感じない」と話した。 熊本市中央区の桜町バスターミナルでも、全国ICカードが使えないことを看板で周知。熊本─福岡の高速バス「ひのくに号」では、西鉄バスの便で引き続き全国ICカードが使えるが、九州産交バスでは使えなくなった。福岡に向かうという熊本市の女性会社員(23)は「今までスイカを使っていた。バス会社を調べなければならないのは手間だ」と不満げだった。 一方、運行事業者は、クレカなどのタッチ決済に対応する端末の導入も始めた。5社でつくる「共同経営推進室」の今釜卓哉担当課長は「全国ICカードの利用者には不便をおかけするが、1日でも早く取り付けて、便利に使ってもらえるようにしたい」と話した。(樋口琢郎、岩崎皓太)