【新連載】聖夜にアガる! 東京駅を見下ろす高級ホテルのレストランで三ツ星シェフ監修のフライドチキンを齧りたい
ラグジュアリーなホテルでフライドチキン……?
「丸の内のフォーシーズンズホテルがフライドチキンを出している」という噂を耳にしたのは、たしかコロナの真っ最中だった。以来、寝ても覚めても(というのは言い過ぎだが)そのことが頭から離れず、そうこうしているうちに時は流れ、先日やっと念願のフライドチキンとの対面の機会に恵まれた。 雨が夜更けすぎに雪へと変わりそうなくらい冷え込む、12月の丸の内。「フォーシーズンズホテル丸の内 東京」といえば、先ごろ総料理長のダニエル・カルバート率いるフレンチレストラン「SEZANNE(セザン)」が、ミシュランガイド東京2025で三つ星を獲得して話題を集めたばかり。そして、同フロアのダイニング「MAISON MARUNOUCHI (メゾン マルノウチ)」で供される料理もダニエル氏が監修しており、なかでもフライドチキンは「MAISON MARUNOUCHI (メゾン マルノウチ)」のために作ったメニューだ。 クリスマスのデコレーションが華やかなロビーを抜け、エレベーターで上階へ。サービススタッフに案内され、店内を奥へと進むと、眼前に東京駅の新幹線ホームをのぞむロマンティックな空間が現れる。 席につき、まずはビールで乾いた喉をひと潤し。メニューを開くと、フライドチキンの文字が燦然と輝いて見える。
絶品フライドチキンには“鳥絶”なこだわりが!
夕焼けに染まる東京の駅舎をうっトリ眺めていると、ほどなくして「マルノウチ フライドチキン コーンブレッド ランチドレッシング」が運ばれてきた。バスケットのようなかごに入ってくるのかと想像していたが、皿上に鎮座するフライドチキンの端正なこと。これぞホテルメイドの格というべきか。ナイフとフォークを使うか悩むところではあるが「フライドチキン齧り隊」的には、やはり素手でいただくことにしよう。 神々しささえ感じさせるフライドチキンをまえに、ドラム(脚)、とサイ(骨付き上腿)のどちらから食べるべきか少し悩む。私はビジュアルも含めてドラムが好きである。そして、好きなものは最初に食べる性分だ。 手づかみで持ち上げたフライドチキンはしっかりと量感があり、ふんわりと鼻孔をくすぐるスパイスの香りに食欲スイッチがオン。ひと思いに齧りつけば、とぅるんと肉片がはがれ、しばしの咀嚼のあとに旨みの余韻を口中に残して胃の中におさまる。当然、陶酔。 日本では岩手県産の鶏を使用し、12時間ヴィネガー主体のマリネ液に漬けたものをパプリカなどのスパイスを配合した衣を付けて揚げ、さらに辛味スパイスの入った鴨脂で外はパリッと、なかはジューシィな食感に仕上げる。その愛情の深さ、思い入れの強さが感じられる味を噛みしめながら「今日が私のフライドチキン記念日」と心のなかで呟く。ともすれば、ぱさっとしがちなサイも見事な脂の潤みをたたえており、「サイ高!」のひと言。