トランプ次期政権の閣僚候補「性的暴行で告発された人」も 上院での承認に一波乱あるか
本来は適性で指名されるはずの閣僚人事が異常な展開を見せている。かつては経験や適性が問われたが、トランプ氏への忠誠心に重きが置かれた。AERA 2024年12月9日号より。 【写真】「トランプ次期政権の顔ぶれ」はこちら * * * 野望や思惑が渦巻き、閣僚人事がまるでシェークスピアの悲喜劇のようにも見える。 国防長官は、ピート・ヘグセス氏。保守系テレビ、FOXニュースの司会者で元軍人。プリンストン大学卒業後、陸軍州兵としてイラク戦争開戦直後にキューバのグアンタナモ基地やイラクで勤務した。しかし、国防・国家安全保障政策の経験は皆無の「素人」だ。彼は軍人時代、上司と反りが合わず、「軍隊で疎外感を抱いていた」と米メディア。しかも21年1月、バイデン氏の大統領就任式の際、白人至上主義への連帯を示す刺青を理由に、ワシントンでの警備から外されたという。彼の著書によれば、失望によって同年3月、16年の軍人歴に終止符を打った。 17年、ヘグセス氏がカリフォルニア州のホテルで女性に性的暴行をしたとして、被害に遭った女性が警察に告発した。示談金で解決されたものの、今回閣僚に指名された後、CNNが警察への告発状を入手。女性が何度も拒否したにもかかわらず、電話を奪った上で行為に及んだという詳細が伝わった。トランプ次期政権の閣僚候補者は、共和党が多数を占める米上院議会の承認が必要となるが、この事件が上院での承認に影響を及ぼす可能性が浮上している。 ■「肝いり」人事が失敗に、人事権の適性を疑問視され 一方、過去の性的暴行事件で、閣僚ポストを逃したのが、マット・ゲーツ元下院議員だ。つり上がった眉や「ミニトランプ」のような過激な発言でいかにも「問題児」風貌のゲーツ氏を、トランプ氏は11月13日、司法長官に抜擢(ばってき)した。ゲーツ氏は即日、下院議員を辞任、上院での承認を獲得するため、重鎮議員への訪問を始めた。しかし、同氏には17年、パーティーで未成年女性に金銭を払って性交渉をし、違法薬物を使ったりした疑惑が常に付きまとっていた。上院では4人の共和党同僚議員が承認に反対を表明。ゲーツ氏は、トランプ氏の指名からわずか8日で辞退した。