『モンスター』を完走した趣里のポテンシャル 人間を怪物に変えるものとは?
12月23日に放送された『モンスター』(カンテレ・フジテレビ系)最終話では、盤面を挟んで向かい合っていた父と娘がタッグを組んで怪物に立ち向かった(以下、ネタバレあり)。 【写真】『モンスター』最終話場面カット(複数あり) 山遥村の環境汚染を調べていた亮子(趣里)たちは、サカミクリーンで帝東電機から出た産業廃棄物を扱う従業員に健康被害が出ていることを突き止める。粒来(古田新太)はサカミクリーンの代理人として、従業員の健康データを集めていた。帝東電機に対して共同で訴えを起こそうとした矢先に粒来が倒れる。粒来はガンに冒されていた。 粒来が語った経緯から、弁護士登録を抹消した理由が明らかになる。娘の亮子は、粒来が表舞台に出てきたことを知って弁護士登録をした。離れていても父と娘の考えは通じあっているようだった。ようやくこぎつけた裁判だったが、道は険しかった。最終話では、大企業を相手にした集団訴訟の難しさが描かれた。立ちはだかったのは村人たちの先入観と偏見、未知の物質だ。村人たちは、天下の帝東電機が有害物質を排出するはずがない、悪いのは反社だと言い、メディアも裁判を取り上げない。穴がないように見える巨大な壁に亮子と杉浦(ジェシー)たちは爪を立てる。 「どんなバカげたことでも、今やれることをやらない人に幸運の女神は微笑まない」 裁判所の内外で集めたデータから「マリシン」と呼ばれる物質が検出される。英語の「malice(悪意)」を想起させる名称の物質は国に認定された有害物質ではなく、被害との因果関係は不明。仮に国が公式に認めたとしても10年スパンで時間がかかる。ここで諦めるかというと、亮子の答えは必要なら「やる」。針の一突きのような微小な、一見するとくだらない動きを何度も繰り返すうちに、相手の方が根負けして和解を受け入れる。そうやってできた小さな穴を、今度は少しずつ広げる。人間は習慣の生き物であり、さくら(前田敦子)や拓未(前原滉)の呼びかけに村人たちは知らないうちに影響されていく。 一方の皿には分銅、もう一方は何もない。天秤は傾いたままだ。羽根が1枚だと重さを感じないが、何枚も重なればわずかに天秤が動く。亮子たちがやったのは、羽根を天秤の皿に乗せる作業だ。山を動かすために何をすべきか。帝東電機のような巨大企業を敵に回し、絶対不利な状況で大勝負に出ても結果は見えている。できることをコツコツやるのは精神論のようだが、「1」を確実に積み重ねることが結果的に近道というケースは多々ある。ゲーマーの亮子らしいデジタルな思考であり、今作特有の情報量が活かされていた。