香港・雨傘運動から10年、横浜で写真展 4年ぶり現地取材のカメラマン「デモの痕跡、完全に消された」
2014年の香港民主化デモ「雨傘運動」から10年となる節目にささやかな写真展が、横浜・みなとみらい21(MM21)地区で開かれている。政府の弾圧で封じ込まれ、自由を失った香港。10年にわたり民主化運動を追う横浜のカメラマンが4年ぶりに現地入りし、目の当たりにしたものは-。 【写真で見る】監視カメラが増設された現在の香港、催涙弾が飛び交う2019年のデモ(中村さん撮影) 「以前はいたるところで、人々がおしゃべりしていたのに、今は一人ポツンとスマホをいじる姿が目立った」。中村康伸さん(55)は今年4月、2020年3月以来となる12回目の現地取材を行った。介護士などをしながら、14年12月から撮影を続ける。 中国政府は人が集まることを嫌がる。反政府活動に発展するのではないかと恐れているためだ。スマホをいじる姿は街の主役の座を奪われ、自分を殺して耐えているように見えた。 入境前は不安があった。19年のデモ取材で、共に催涙弾が飛び交う中を走り回った盟友のジャーナリストの小川善照さんは昨年、入境を拒否された。活動家だけでなく、デモ参加や交流サイト(SNS)へ書き込みをしただけの普通の市民も逮捕されている。「私が接触した人が逮捕されたり、政府から嫌がらせを受けたりするのではないか」と中村さん。 滞在した6日間はひたすら民主化デモの跡地を歩き回った。「スローガンが書かれていた壁は塗り直され、監視カメラがさらに増えていた。デモの痕跡は完全に消されていた」 魅力の一つだったにぎわいも熱気も以前ほど感じられず、中国本土から来た観光客ばかりがわいわいと買い物を楽しんでいた。百万ドルの夜景が売りの不夜城のはずが、現地在住の日本人は「香港人は夜、出歩かなくなった」と嘆いた。 翻って日本国内。香港のデモや現状への関心は高くない。今回の写真展には風化に対する抵抗の思いも込めた。展示した50点は一連の雨傘運動と今回の取材で撮影した市井の様子が中心となった。11日までみなとみらいのシェアスペース「BUKATSUDO」で入場無料で開かれている。
神奈川新聞社