国交省が地方銀行と組んでファンド設立、空き家リノベで分散型ホテル創出など地域の価値向上の支援を聞いてきた
世界が評価、愛媛県大洲市の分散型ホテル
MINTO機構によると、全国各地で空き家や空き店舗が増加し、古民家が取り壊されて跡地にマンションが建つなどして、往時のまちの風景が失われてしまうケースも出ていた。こうした地域に人流を取り戻したい、まちの風景を残していきたいといった地域の人々の悩みを解決するため、2017年にまちづくりファンド支援事業が始まったという。 ファンドのお金は、どのような事業に使われているのか。 伊予銀行(本店・松山市)とMINTO機構が2020年に設立した資金規模2億円の「大洲まちづくりファンド」は、城下町の町並みが残る大洲市内の肱南(こうなん)地区など3つのエリアでおこなわれる古民家や空き家などのリノベーションを支援。リノベーションされた歴史的建造物や古民家は分散型ホテル「NIPPONIA HOTEL 大洲 城下町」として運営され、人気を集めている。大洲市は、地域の持続可能な観光の取り組みを評価する国際認証団体「グリーン・デスティネーションズ」が選ぶ「世界の持続可能な観光地100選」に2022、23年と2年連続で選出された。 「本来であれば時間の経過とともにどんどん壊されていったかもしれない歴史的建造物を守ることによって地域の価値を高めることができました。分散型ホテルを運営することで地域の雇用も生まれ、人も集まってきています」(MINTO機構の担当者)
ファンドを活用し、まちの回遊性向上やにぎわい創出を
ファンドの活用は、民間のまちづくりにどのようなメリットがあるのだろうか。対象地域で空き家や空き店舗の利活用に取り組むある事業者は、「弁済負担の軽減」を挙げる。 ファンドから社債引き受けによって支援を受ける場合、満期一括償還となるため、事業の立ち上げ期に元本分の返済に追われることがなくなる。また、一般的に古民家は築年数の古さなどから担保取得が難しく、金融機関からの融資を受けにくいが、ファンドなら対応が可能になる。 MINTO機構によると、地域のまちづくり事業者や金融機関、行政などからの相談がファンド設立につながることが多い。その場合、まちの規模やポテンシャルに応じたきちんとした構想があるか、地域の金融機関が事業に対して積極的か、空き家バンクなど行政の支援策の有無、事業の旗振り役となるまちづくりプレイヤーの実績などがポイントになるという。 2024年3月には、兵庫県の姫路市・たつの市・宍粟市の特定地域を対象にした「にししんまちづくりファンド」と青森県弘前市が対象の「プロクレアまちづくりファンド」が設立された。 MINTO機構の担当者は「新型コロナの影響が緩和され、人流も回復してきましたので、新たに事業を始めたいという方もこれまで以上に増えてくると思います。引き続きファンドを通じて、まちの回遊性向上やにぎわい創出に資するような案件の資金支援をしていきたい」と話す。空き家や空き店舗の活用は、各地に共通する課題だ。ファンド活用による、地域に合ったまちづくりが期待される。 取材・記事 ライター 南文枝
トラベルボイス編集部