トップクリエーターから見た縦型動画の可能性【SENSORS】
TikTok、YouTube ショートを中心に縦型動画を視聴できるメディアが急増し、ユーザーからの支持も高まっている。今回は、映像分野のトップクリエーターが集まり、縦型動画独特の表現手法やアイデアなど、制作者の視点でディスカッションを繰り広げた。
■つぶやくように投稿できる縦型動画
大ヒット作『カメラを止めるな!』で知られる、映画監督の上田慎一郎さん。2023年にはカンヌ国際映画祭の「#TikTokShortFilmコンペティション」において縦型映画『レンタル部下』でグランプリを受賞した。上田さんは、TikTok向けの縦型映画を制作するうえで、面白さ、そして難しさを感じた点について、次のように語る。
「映画館で一本の映画作品を見るシチュエーション、家にいて、スマホで縦型映画を見るシチュエーションをそれぞれ比較すると、想定される視聴者が異なります。すると、制作上の構成が変わってきます。たとえば、そもそも画角が違いますし、テンポ、スピード感など縦型映画ならではの独特の構成があるといえます。動画をたくさん見て、勉強してから作る過程もとても楽しかったです」 「縦型の画角から演出を考える、縦型の景色を探す、といったことにも取り組みました。たとえば、美容室では、お客さんと美容師さんが縦に並んで会話をしますよね。そのように、人が縦に並んで会話するシチュエーションを考えたり、探したりしました」 撮影から世の中に出すまでの早さも特徴的だと続ける。 「スマホで素早く撮って、編集して、すぐに発表できます。つぶやくように投稿できる点が非常に面白いと思っています。従来の映画やドラマは、企画、制作から公開まで長い時間がかかっていました。制作に時間がかかると、作品を発表するタイミングでは、既に世の中の空気が企画時点と変わってしまっていることもあります。しかし縦型映画の場合、極端にいえば、朝見たニュースにインスパイアを受けて、その日に撮って夜公開することも可能です。議論や論争が巻き起こっているテーマに対して、作品を通じて意見を表明し、それによってリアルタイムに世論を変えるなども可能だと思います。縦型動画というメディアの登場によって、動画制作に取り組むハードルが下がったといえるのではないでしょうか」 藤井風さんやYOASOBIのミュージックビデオなど、さまざまな映像を手がける、映像ディレクター関和亮さんは、大きな縦型のシアターが世の中に登場したら面白いのではないか、と述べる。