「おじいちゃん子」夢舞台に形見 天理・政所捕手 選抜高校野球
祖父もきっと、空から見てくれている――。第93回選抜高校野球大会で24年ぶりに準決勝に進出した天理(奈良)の政所(まどころ)蒼太捕手(3年)は六回裏の攻撃、二塁ベース上で拳を突き上げた。東海大相模(神奈川)に1点リードされて迎えた2打席目、強く振り抜いた打球は左中間への大飛球に。先頭打者として得点圏に出塁し、反撃の口火を切った。 【東海大相模vs天理】29年ぶりに4強で再戦 小さいころに野球を教えてくれた祖父俊文さん(享年70)を、昨年5月に亡くした。家族一の「おじいちゃん子」で、今大会にも、俊文さんの形見の数珠のブレスレットを持って出場。アルプス席で、俊文さんの遺影と共に応援に駆けつけた祖母昭美さん(69)は「主人が一番、孫の活躍を喜んでいると思う」と涙ぐんだ。 俊文さんは父方の祖父。政所捕手が小学2年のころから野球を指導しており、自宅の庭に、バッティング用のお手製のネットを張るほどの熱の入れようだったという。天理に進学する際も、「頑張っておいで」と、背中を押し、甲子園でプレーする姿を楽しみにしていた。 闘病中に入院していた際も、病室の壁にユニホーム姿の孫の写真を何枚も飾り、「自慢の孫」と周囲に話し、目を細めた。最後に会えたのは、昨年3月に余命1カ月の宣告を受けた直後。2カ月後に亡くなった際も、政所捕手は葬儀にかけつけ、泣きながらひつぎに感謝の気持ちをつづった手紙を入れたという。 いつもは手首に着けている形見のブレスレット。今大会はユニホームのポケットに大切にしのばせて臨んだ。強気で的確な配球でエース達孝太投手(同)ら投手陣を好リードし、全試合安打計5打点の大活躍。母良子さん(40)は「おじいちゃんが見守ってくれていると思い、心強かったのかもしれません」。 六回裏の攻撃は後続が凡退して残塁。その後も今大会無失点投球を続ける東海大相模のエース石田隼都(いしたはやと)投手を打ち崩せず敗退したが、甲子園では達投手との「最高のバッテリー」という形を残せた。この日も球場に足を運んだ昭美さんは、遺影をグラウンドの方に向け、「お父さん、蒼太、頑張ったで。見えるでしょ」。遺影の顔が「よう、頑張ったな」とやさしくほほえんだ気がした。【広瀬晃子】 ◇決勝戦もライブ中継 公式サイト「センバツLIVE!」では、決勝もライブ中継します(https://mainichi.jp/koshien/senbatsu/2021)。また、「スポーツナビ」(https://baseball.yahoo.co.jp/senbatsu/)でも展開します。