2回戦 高松商「夏へ」前向く 最後に満塁、あと一歩 /香川
<センバツ2019> 第91回選抜高校野球大会に出場している高松商は大会第6日の28日、2回戦で3年ぶり6回目出場の市和歌山(和歌山)と対戦した。序盤に先制を許し追いかける苦しい展開となった。中盤から反撃を開始し粘りを見せ、最終回にも満塁の好機を作ったがあと一本が出ず、2-6で敗れた。それでも最後まで諦めないプレーをした選手たちに、スタンドからは惜しみない拍手が送られた。選手たちも「もっと強くなってこの場所へ帰ってくる」と前を向いた。【潟見雄大、隈元悠太】 【熱闘センバツ全31試合の写真特集】 ……………………………………………………………………………………………………… 高松商 000002000=2 12030000×=6 市和歌山 4点を追う九回。香川卓摩投手(3年)、新居龍聖選手(同)の連打などで2死満塁の好機を作る。高松商の応援団が詰めかけ満員となったアルプススタンドからは「ここから一気に逆転するぞ」と声が飛んだ。打席には3番の谷口聖弥選手(2年)。「後ろの先輩たちにつなぐ」と3球目を振り切ると鋭い打球がセンターへ。しかし相手の好守に阻まれ試合終了。全国制覇の目標は夏に持ち越しとなった。 この日の先発は中塚公晴投手(3年)。スタンドからは母あけみさん(45)が「自分の持ち味を発揮して楽しんで投げてほしい」と見守った。しかし初回に本塁打を浴びると二回にも2失点。四回途中からはエースの香川投手が登板したが、相手の勢いを止められず、6点を追う展開になった。 相手投手に四回まで無安打に抑えられていた打線は五回、先頭の上田蓮選手(2年)が「なんとかして流れを変えたい」と中前にはじき返しチーム初安打。得点にはつながらなかったが、2番手の香川投手も五回以降は無失点で切り抜け流れを引き寄せた。 反撃は六回。先頭の大塚慶汰選手(3年)が「ボールがうわずっている」と見極め、10球も投げさせて、狙い通り四球で出塁。その後1死満塁と好機を広げ、打席には五回に安打を放った上田選手。「頼むぞ」とスタンドからの声援に応え、右前適時打で2者を還した。スタンドはこの日一番の盛り上がりをみせたものの後続が倒れ、その後も走者を出すも得点できなかった。 試合後、選手たちは悔しさをにじませながらも夏へ向けてリベンジを誓った。浅野怜選手(同)は「勝てる試合だったが自分たちの弱さや詰めの甘さが出た。劣勢をひっくり返せる実力を付けたい」。立岩知樹選手(同)は「良い投手との対戦や大舞台でプレーできた経験を夏に生かしたい。絶対に戻ってくる」と決意を語った。 ◇中軸打てる打者へ 上田蓮選手(2年) 六回1死満塁で打席が回ってきた。「自分が決める」と4球目、直球を振り抜き、右前にしぶとく落ちる適時打を放った。「狙い通りの打撃ができた」と待望の得点をもたらし、劣勢のチームに勢いを与えた。 中学時代はエースで4番として活躍し、チームを県大会で準優勝にも導いた。しかし高松商では公式戦での登板機会が無く、昨年秋に打撃力を買われ野手に転向。県、四国大会で外野手としてベンチ入りするも出場機会はなく、明治神宮大会ではベンチから外れた。 「悔しかった。甲子園では絶対にメンバー入りする」と決意。練習が終わった後も自主的に素振りや打撃を繰り返した。藤沢宗輝副部長のアドバイスや、「コツコツネバネバ大作戦」を掲げて逆方向への打撃を意識する先輩たちの姿を見て、これまで引っ張り中心だった打撃を見直した。レフト方向へ大きい当たりを狙うのではなく、ライト方向へ低い打球を放つチーム打撃に徹するように。 「今は単打の延長が長打になるという意識」で打席に入る。23日の初戦は七回に代打出場。公式戦初打席で適時打を放ち、28日の先発出場を勝ち取った。 甲子園では5打数3安打3打点の活躍。いずれもセンターからライト方向への安打だった。それでも「(2死一、二塁という)八回の大事な場面で打てなかった。力不足です」と反省も。「一からやり直して、夏は中軸を打てる打者になって戻ってきたい」と決意した。【潟見雄大】 ◇共に戦う応援部 ○…高松商側のアルプス席では学ランを着た応援部リーダーの生徒が声援を送った。甲子園から遠ざかったことで応援部は活動を休止したが、3年前のセンバツ出場を機に7年ぶりに復活。今では入部希望者数が多く、抽選で選ぶほどに。センバツ出場を決めてからは、放課後の3時間を練習に費やしてきた。黒の詰め襟に身を包んだ部長の真鍋萌さん(3年)は「グラウンドの選手と一緒に戦っていることを意識している」と元気よく腕を振っていた。 ◇夏も演奏したい ○…アルプス席に陣取った高松商吹奏楽部の生徒たちは攻撃中に好機を迎えると、チャンステーマ「プリティーフライ」を演奏して選手を後押し。選手やファンからは「演奏されると点が入る」として「魔曲」と親しまれているが、今回は好機を生かせず敗退。部長の入砂葉月さん(3年)は「最後まで諦めずプレーしてくれたので良かった。夏にまたここで演奏させてほしい」と汗を拭いながら選手たちにエールを送っていた。