敦賀気比・春山陽登 母への感謝を胸に打席へ 選抜高校野球
母のために――。第94回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高野連主催)第2日の20日、第1試合で広陵(広島)と対戦した敦賀気比(福井)の3番打者、春山陽登選手(3年)は、4人きょうだいを女手一つで育ててくれた母真美さん(41)への感謝の思いを胸に打席に立った。 【1回戦屈指の好カード 広陵vs敦賀気比を写真で】 野球を始めたのは小学1年の時。とにかく練習が大好きで、負けず嫌い。どこに行くにもグラブを持ち歩き、ひまさえあればキャッチボールなどをしていた。試合でスタメンを外されると、コーチに理由を聞きに行く。「パワーが足りない」と言われ、小学生ながら食事にこだわり始めた。少しでも力強くなりたいと、ウエートトレーニングの前日の夕食には「(たんぱく質の多い)鶏肉のささみを食べたい」など、メニューを細かく求めるようになったという。 一人親となり、家計を支えるため昼夜を問わず働く真美さん。春山選手の兄や姉、弟もそれぞれスポーツに打ち込んだ。「子供がやりたいことを全力で応援したい」と考えてきた真美さんは練習場への送り迎えなどのサポートに心血を注いだ。飲食店を営む近所の人も食事を用意してくれるなど助けてくれた。 春山選手は昨秋の北信越地区大会の直前、真美さんに電話をかけた。それまでの感謝を伝え、「絶対に甲子園に連れて行く」と約束。迎えた同大会では準決勝で本塁打を放つなど活躍し、約束を果たした。「息子を信じて見守っていました」と真美さんは振り返る。 そうして迎えた20日の初戦。敦賀気比は終始劣勢で、春山選手も3打席ノーヒットに終わった。「最後まで逆転を諦めない」と応援し続けた真美さんは、ゲームセット後にスタンド前にあいさつに来た息子らを見つめ、拍手でねぎらった。 「ホームランボールを母に渡したかった。良い当たりもあったが、相手の守備を越えられなかったのは自分の技術不足」。自らの打撃をそう振り返り、春山選手は言った。「死に物狂いで練習し、また母を甲子園に連れてきたい」【大原翔】 ◇全31試合をライブ中継 公式サイト「センバツLIVE!」(https://mainichi.jp/koshien/senbatsu/2022)では大会期間中、全31試合を動画中継します。また、「スポーツナビ」(https://baseball.yahoo.co.jp/hsb_spring/)でも展開します。