「インフラの大手」なのにPBR1倍割れの常連…電力会社が市場で低評価な理由
11月から、電気料金が値上がりする。 原料価格の高騰や為替相場の変動など、確かにエネルギーをめぐる外的環境変化はここ数年、苛烈を極めている。一方で、2023年度の通期決算を見れば、東京電力や関西電力といった大手電力会社10社中8社が過去最高益を叩き出している。 【全画像をみる】「インフラの大手」なのにPBR1倍割れの常連…電力会社が市場で低評価な理由 電力会社といえば安定したインフラ企業── とイメージする人も多いかもしれないが、直近の状況を見ると、そうはいかない現実がある。株式市場から見ても、企業への成長期待を示す一つの指標でもあるPBR(株価純資産倍率)は軒並み1倍割れと低水準だ。 好調に見えても、市場から評価されない理由はどこにあるのか。アナリストに聞いた。
規模は大きくても…燃料価格に振り回される業績
電力各社は原料価格や為替、原子力発電所の稼働状況によって業績が大きく左右される。 2022年度、大手電力10社の決算を見ると、中部電力を除く9社が営業赤字に陥った。2023年度は打って変わって、関西電力や中部電力など8社が過去最高益を更新した。関西電力を例に挙げると、2022年度は営業損失が520億5600万円と赤字だったのに対して、2023年度の営業利益は7289億3500万円だった。1年の業績の差としては大きすぎる数字。いかに外部環境に左右されやすいビジネスなのかがよく分かる。 こうした特性を持つ電力会社のビジネスはどこで差が付き、どう評価されるのか。大和証券で電力・ガスセクターを担当する西川周作アナリストは、 「電力株のアナリストとしては、配当利回りだけを見ている。つまり、会社としていくら稼いでいるかよりも、会社としていくら還元してくれるかに着目している」 と言い切る。 通常、企業の経営戦略や投資判断など経営に関わる動きを評価していくものだが、西川アナリストのコメントからは電力会社が置かれている独特なビジネス環境が見えてくる。 一つは、需要の安定性だ。電気は人々の生活に必要なインフラであるがゆえに、需要が安定していて、急に売れなくなるということはまずない。電力自由化によって企業間の競争が強まったとはいえ、傾向は大きくは変わらない。 大手電力会社の売上高は数兆円規模、営業利益は数千億円に上る。安定的に売り上げが見込める規模の大きいビジネスだ。 一方で、経営そのものを評価するには「見通しがつかなさすぎる」(西川アナリスト)。 「簡単に赤字になる。要因は原子力発電所の停止や燃料価格の高騰などですが、これらは成長戦略が変わったとか、ビジネスモデルが崩壊したといった自社の問題ではない。毎年の損益計算が全然読めないのです」