手首メモ“wemo”や筒形タオル“STTA”など…「ケンマ」逆転の発想力とは
今井流アイデアが生まれる現場~緻密な販売戦略も
今井のアイデアが生まれる現場に迫ってみた。行われていたのは、「モノトラップ」という素材を使った一般向け商品の会議。「モノトラップ」には小さな穴が無数に空いていて、香りの成分を大量に吸収できるのが特徴だ。 まずはスタッフが「襟元など匂いが気になるところに取り付けて消臭する」「嫌なにおい、足のにおいなどを消臭」と、アイデアを出す。すると今井は、それらが書かれたメモを「吸収」などの大まかなカテゴリーに分けていく。 「モノトラップ」には熱を加えると吸収した香りを拡散させる性能もある。スタッフからは「例えば好きな花の香りを吸着させて、それをアロマとして出す」というアイデアが出る。これは「大きくいうとキャッチ&リリース」(今井)というカテゴリーに。アイデアのカテゴリー分けを終えると、ここからが本番だ。 「あまり意識してなかったと思うけど、吸うのは嫌な香りで、出す方はいい香りというアイデアばかりだった気がする。じゃあ、逆を狙おう」 誰も気づかなかった視点にこそ、ヒットの種がある。これぞ今井流、逆転の発想術の真骨頂だ。その視点に、スタッフは「どういう基準で、売れるものユニークなものとするかという判断基準を教えてもらえるのが、すごく面白いなって思っています」と言う。 では、嫌な香りを出す商品とはいったいどんなものなのか。埼玉・入間市の「ジーエルサイエンス」社で、新たな視点から生まれた商品の試作品ができ上がった。 それは強烈なミントで眠気を覚ます「アロマショット」。高機能な素材を使っているため、価格はちょっと強気に1万5000円ほどに設定した。 商品のイメージが固まったら、次はどんな人が買ってくれるか、自ら探しに行く。想定したユーザーはエナジードリンクを頻繁に飲む人だ。 「例えばエナジードリンクを週3本飲む人は、年間3万円ぐらい使う。その人にとって1万5000円は安いんじゃないかと、ロジカルに決める」(今井) 市場調査の協力者の仕事は救急救命士。夜勤が多く、眠気を覚ますためにコーヒーを毎日1リットル飲むという。さっそく試してもらい、「いくらだったら買うか?」と確認した。 確実に買ってくれる人たちの特徴をつかみ、その層への販売戦略までケンマが考えている。アイデアは大胆でも販売戦略は緻密。企業側も一歩を踏み出しやすくなる。 「緻密に考えていて繊細な方だなと。非常に感謝しています」(「ジーエルサイエンス」大窪泰二さん)