海外ブランド買収でスタバ超えを狙う、フィリピン ジョリビーの海外戦略
フライドチキンが人気のファストフードチェーンが、海外のコーヒー店を買収?その背景には、世界的な流行と海外進出のセオリーを押さえた戦略があった。 フィリピン発のファストフードチェーン「ジョリビー・フード」は長年、米国発のスターバックス コーヒーのようなグローバル展開を夢見てきた。 熱々のフライドチキンと甘めのスパゲティで知られる同社は、フィリピン国内では今やマクドナルドやケンタッキー・フライド・チキンを超える人気を誇る。現在は傘下企業を含めて、33カ国で19の外食ブランドを展開。バブルティーや中華料理、フィリピン風バーベキュー、ピザなどを提供している。 ジョリビーが注力しているのが、コーヒーや紅茶などのホット(温かい)飲料市場だ。調査会社スタティスタによると、世界全体におけるファストフード企業の2023年の売り上げが前年比1.1%増だったなか、コーヒーチェーンのそれは9%も増加。30年には8000億ドル市場に成長するとの予測もある。 今後10年でジョリビーを世界トップ5のファストフードチェーンに育てる──。そんな野心を抱くエルネスト・タマンティオン(66) CEOが、この機を逃すことなどない。 24年7月、ジョリビーは2億3800万ドルを投じて2500店舗近くを展開する韓国の大手コーヒーチェーン「コンポーズコーヒー」の株式7割を取得。K-POPグループ「BTS」の一員であるキム・テヒョンが、ジョリビーのブランドアンバサダーを務めていることから、K-POP人気にあやかって若い層の支持を勝ち取る目論みがあるのではないか、とフィリピンのコンサルティング企業eMBMで働くジョナサン・ラベラスは分析する。 ジョリビーはほかにも、12年にベトナムのコーヒーチェーン店、19年に米国のコーヒーチェーンを買収するなど、店舗網を拡大し続けてきた。こうした既存の外食ブランドを買収することで、未進出の海外市場に参入するのが狙いだ。また、傘下企業が共同で既存顧客に製品やサービスを売り込むことによる相乗効果を生み出そうとも考えている。 こうした買収戦略を評価しつつも、実を結ぶか、一部の投資家は確信をもてずにいる。それでも、タマンティオンは米国での上場も視野に入れている。当面、その歩みを止めることはなさそうだ。 エルネスト・タマンティオン◎フィリピン最大級のファストフードチェーン「ジョリビー・フード」のCEO(最高経営責任者)。10年前、同社を創業した兄のトニー・タン・カティオンの跡を継いだ。10代は父親が経営する中華料理店で働き、マニラの大学で経営学を専攻しながら兄が経営する飲食店でアルバイトした。その店がのちのジョリビー1号店になった。
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