子供の遊びからオリンピック競技へ! 「BMX」の誕生と発展の歴史とは
バイク(モーターサイクル)と密接な関係が
通勤・通学やお買い物、レジャーから健康のための運動まで、日々の生活の中で身近な乗り物として普及している自転車は、用途に合わせて様々な種類が存在するので、多くの人が乗ったことがあるでしょうし、触ったことがない人の方が少ないかもしれません。 【画像】「BMX」を画像で見る(6枚)
そんな中で、とくに浮世離れした世界で活躍するのが、2024年のパリオリンピックのフリースタイル競技で中村輪夢選手が決勝に進出したことでも話題になった「BMX」でしょう。ここでは競技としてではなく、自転車としてのBMXの歴史を紐解いてみましょう。 基本的に前後20インチのタイヤを装備した小さめのフレームで、「Ω」を逆にしたようなハンドルが特徴的です。正式名称の「Bicycle Motocross(バイシクル・モトクロス)」からも推測できるように、実はバイク(モーターサイクル)と切っても切り離せない関係を持っています。 BMXの発祥とされているのは1970年代初頭のアメリカ・カリフォルニア州です。バイクのモトクロス競技に憧れた地元の子供たちが、自分たちが使っていた子供用(20インチ)の自転車で真似をして、荒れ地に作ったコースに坂やジャンプ台を設置して自転車で走って遊んていたことが始まりだと言われています。 ちなみに、当初はレース競技だったBMXですが、1980年代にジャンプ中にアクロバティックなトリックを披露する、いわゆるフリースタイルと呼ばれる競技が確立します。そして1990年代には、元となったバイクのモトクロス競技にBMXのトリックが逆輸入されて、フリースタイルモトクロス(FMX)が誕生したそうです。 また、子供の遊びだったBMXを全米に広めたきっかけにもバイクが関わっていると言われています。モトクロスレースをはじめ、全米各地で開催される数々のバイクレースに参加している選手やファンたちの姿を映した、ブルース・ブラウン監督のドキュメンタリー映画『栄光のライダー』(1971年)のオープニングで、子供たちが自転車でモトクロスレースの真似をするシーンが使われたことで、多くの人にBMXを印象付けた一因となったそうです。 そのような広がりの中で競技人口が増え、専用の自転車をリリースするメーカーも増加しました。中でもヤマハが制作した「モトバイク」は、現在の競技用自転車の原型のひとつになったと言われる名車です。 また、日本製のBMXで忘れてはいけないのは、大阪の自転車メーカー「KUWAHARA BIKE WORKS」のBMXでしょう。スティーヴン・スピルバーグ監督の名作SF映画『E.T.』(1982年)で、主人公の少年が月を背景に空を飛ぶ自転車こそがそれです。 その誕生からBMXを使ったレース、アクロバティックなトリックを披露するフリースタイルという競技が確立していくなかで、スポーツとしてだけではなく、ストリートカルチャーとして発展を続けていることもBMXの特徴のひとつと言えるかもしれません。 BMXと同様に、オリンピックの正式種目に採用されたことでさらなる盛り上がりを見せているスケートボードのカルチャーと近しい文脈を持っており、知名度で言えばスケボーの方が上かもしれませんが、今後はBMXもメジャー競技としてさらなる高みに昇る可能性を秘めていると言えるでしょう。
史(ちかし@自転車屋)