史上最多6人指名の富士大、15年連続の明大… ドラフトでプロから“求められる”理由とは
元セールスマンの明大監督、高校野球のスタンドに足繁く通う青学大監督
明治大学からは今年のドラフトの目玉といわれていた宗山塁内野手が楽天1位、浅利太門投手が日本ハム3位で指名され、史上最長の指名選手輩出を「15年連続」に更新した。 「田中武宏監督は今年限りで勇退となりましたが、2011年からコーチ、2020年から監督を務め、計14年間もチーム強化に関わりました。2022年の春から3季連続優勝するなど、実績も抜群。強さの秘訣はやはり、スカウティング力でしょう。田中監督は現役時代に明大、日産自動車で外野手としてプレーし、引退後は自動車のセールスマンをしていただけに、フットワークが軽い。宗山の母校である広島・広陵高校など、全国の強豪校に足を運び、太いパイプを築いています。ウチに入るにはある程度、学業の評定点も必要ですが、最近は高校の監督さんの方がその基準を頭に入れてくださっていて、『こういう選手がいるのですが、いかがでしょう』と連絡を下さることもあるほど。高校通算140本塁打を放ち、岩手・花巻東高校から米国のスタンフォード大学に留学した佐々木麟太郎内野手も、最後までウチとの二者択一に悩んだと聞いています」(明大野球部OB) そして青山学院大学は、昨年のドラフト会議で、常廣羽也斗投手が広島1位、下村海翔投手が阪神の1位で指名された。今年も、西川史礁外野手がオリックスとの競合の末にロッテ1位、佐々木泰内野手が広島1位で指名された。2年連続で複数の1位指名選手を輩出したのは、史上初の快挙だ。 前出のパ・リーグ球団スカウトは、 「われわれが高校の大会を回っていて、スタンドで最も頻繁に顔を合わせる大学関係者は、青学の安藤寧則監督です。必ず自分の足を使い、自分の目で選手を発掘することを身上にされているそうで、頭が下がります。高校球児について、われわれも情報交換をさせていただくことがあります」 と証言する。
昭和さながらのスパルタ式猛練習で知られる亜大は「根性が違う」
また、今年のドラフトでは指名された選手がいなかったが、亜細亜大学もこれまでに、侍ジャパン・井端弘和監督、ヤクルト・高津臣吾監督、元中日監督の与田剛氏らを輩出。現役でもDeNA・山崎康晃投手、オリックス・頓宮裕真捕手らが活躍している。 「昭和さながらのスパルタ式猛練習で知られています。プロ球団の間でも『亜細亜の選手は根性が違う。技術も確かで使いやすい』と定評があります。ただ、長年チームを率いてきた生田勉さんが昨年6月に監督の座を退かれたので、今後どう変わっていくのかに注目しています」(パ・リーグ球団関係者) チームの“スカウティング力”にも、栄枯盛衰はある。全国随一の強豪で数多くのプロ野球選手を輩出してきた大阪桐蔭高も、西谷浩一監督の中学生球児に対する“鑑定眼”が、チーム強化の秘訣と言われてきた。しかし、今年のドラフトで大阪桐蔭高から指名されたのは、西武の育成3位のラタナヤケ・ラマル・ギービン外野手のみ。しかも、パワフルな打撃が売り物のラマルは、守備に難があり、今夏の甲子園ではスタメンから外れていた。中学時代から軟球で140キロ超の速球を投げていた森陽樹投手(2年)も、やや伸び悩んでいるといわれ、正念場を迎えつつあるのかもしれない。 2025年へ向けたドラフト戦線は幕を開けたばかりだが、“常連チーム”からどんな選手が育ってくるか。 (取材・文/喜多山三幸) デイリー新潮編集部
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