豪華列車「ななつ星」乗務員の知られざる研修内容 社外公募を含む多様な人材が1年の研修を受けた
■運行開始前に1年間の研修を実施 運行開始の1年前、2012年10月1日から1期生の1年間の研修がはじまりました。今思い返しても、プロ集団に1年間の研修とは、なんとも思い切ったことをしたものです。 「まったく利益を生み出さなくても許される」1年という時間を25人もの社員に託した、JR九州史上最大の投資でもありました。 私がインタビューしたのは、次の1期生メンバー3名です。 1人は、現在ななつ星の実質的リーダーであるクルーズトレイン本部次長の小川聡子さん。日本航空の国際線客室乗務員を17年務められ、熊本・阿蘇に移住し、ご主人と民泊を経営されていたなか、インターネットでたまたま見かけた「豪華寝台列車」客室乗務員募集の広告を見つけ、応募されました。
2人目は、2022年に行われた車両改修、「エピソード Ⅱ」スタートのなかで、自身の名が冠されたバー「KAZ BAR」が設けられ、その切り盛りに日々いそしむ数澤康弘さん。 数澤さんは、東京のホテルオークラでそのキャリアをスタートしたマスターバーテンダー。ホテルオークラ福岡に移籍し、忙しく勤務するなかで募集を見つけ、応募されたといいます。 3人目は、現在は、ななつ星を離れ、D&S列車などの営業、プロモーション業務で期待のホープとして中心的存在となりつつある渡邊祐一さん。
社内公募にいちはやく手を挙げたという渡邊さんは当時、「5年以上の乗務経験がある車掌兼クルー」が必要という経営判断にぴったり合致する若手でした。 研修のカリキュラムの記念すべき1時間目は、社長、つまり私の特別講義でした。 「サービスのプロである皆さんにさらにサービスを極めてもらうための研修です。研修を通じて、ななつ星オリジナルのおもてなしとはなんぞや? というテーマを追求してもらいたいと考えています」
そのあとは、まずはJR九州の入社教育を旨としようということで、新卒の新入社員同様に福岡県北九州市門司区にある社員研修センターへ。 鉄道のいろはなどまったく知らないような外部採用組と、社内採用組を、あえて同じ環境に放り込んでみたわけです。 営業基礎と呼ばれる運賃計算、特急料金の算出、難読駅名の暗記、お客さまのきっぷに応じた運賃計算を手計算で行うといったトレーニングも入るので、外部組は右往左往。ここで、社内組がそのフォローにまわります。夜中まで自習室にこもって、一緒に勉強を見てあげたのだとか。