ムササビを求めて夜の生き物観察へ|アウトドアタウンときがわで里山遊び#16
ムササビを求めて夜の生き物観察へ|アウトドアタウンときがわで里山遊び#16
「アウトドアといえば、ときがわを思い浮かべるような”アウトドアタウン”にしたい! 」。そんな思いを抱き、地元の人を巻き込みながら日々さまざまな活動を行なう、野あそび夫婦のアオさんこと青木達也さんが、ときがわの自然の楽しみ方や、そこで暮らす魅力的な人たちなどを紹介します。
ムササビを求めて夜の生き物観察へ
6月上旬になると、キャンプ民泊NONIWAの近くを流れる川ではゲンジホタルが飛びはじめる。なので、タイミングが良ければホタルを見ながらキャンプ泊というぜいたくな体験ができてしまうのだ。先日泊まったお客さまは、ハンモックに揺られながらホタル鑑賞ができたらしい。 都会では見ることのできない生き物は、里山ならではの魅力である。そしてその魅力を最大限に引き出すためには、インタープリターと呼ばれる自然と人の仲介役を担う人たちの存在が欠かせない。 ときがわ町周辺で「ぶらぶら自然学校」という自然体験を企画している石井さんもそのひとりで、個人的にもたくさんの自然のことについて教えてもらっている。 そんな石井さんと、地元ときがわ町で大人気の手作りハムとパンのお店「こぶたのしっぽ」さんで、ムササビを見る夜の生き物観察ツアーを一緒に企画することになったので、コースの下見をしながら歩こうということで集まった。 さっそく歩いていると、石井さんが木に寄生する植物「ヤドリギ」を発見。ヤドリギは、鳥が食べたヤドリギの実の種が消化されずフンとして出てきたものが木に付着し、発芽することで発生するらしい。いつも変なところから生えているなーと思っていたが、そんな理由があったとは。 「あ! フェアリーリングだ! 」石井さんがまた何かを見つけた。ロマンチックな名前に期待が高まるが、目の前にはキノコが並んでいるだけだ。ただよく見ると不思議なことにキノコが円形に生えている。枯れたキノコから菌糸が放射線状に外に伸びて、また発芽がくり返されることでこんな感じの輪ができるのだとか。西洋では妖精がこの輪の中で踊るという話から、フェアリーリングと呼ぶらしい。 自然観察が楽しすぎて目的を忘れそうになるが、今日はツアーの目玉でもあるムササビを確認するのが最大のミッションだ。ということで、一同は観察現場となる神社へ。 意外なことに、神社はムササビを見るには適したスポットらしい。神社にある大きく成長した古い木はアオゲラやキツツキが穴を開けることが多く、その穴をムササビが巣として使うためだ。そして、その巣穴がいまでも彼らの生活圏であることを調べる方法もいくつかある。 まずは地面にフンが落ちてないか探してみる。すると木の実のようなものを拾って石井さんが割って見せてくれた。どうやらこれがムササビのフンらしい。木の実だと皮と実のような構造になっているが、フンは中身がすべてフンなのである。(当たり前なことだが)。 また巣穴にも特徴がある。木の周りにはうっすらと苔で覆われている部分があるのだが、よく見てみると巣穴の周辺だけは苔がなくキレイだ。ということは、そこの巣穴はいまでも出入りしているわけだ。 そんな感じで観測を続けていると、1本の木にムササビが飛び移った気配を察知した石井さん。ムササビはこのあと神社から森へ飛ぶはずと、コースを予測し木と木のあいだの空をひたすら眺める。 結局のところ、ムササビの滑空を見ることはできなかった。それでもまったく残念に感じなかったのは、きっと見ることより探すことが楽しかったからだろう。 見ることだけが目的なら動物園でも良い。こうやって自然のヒントから自分で探すことが何よりも心に残る貴重な体験なのだろう。 ■Profile|青木達也(アオ) レンタル・レクチャー付きでキャンプ体験ができる施設「キャンプ民泊NONIWA」と、暮らしとアウトドアをテーマにしたお店「GRID」を埼玉県ときがわ町で運営。「野あそび夫婦」という夫婦ユニットでキャンプインストラクターとしても活動。監修「ソロキャンプ大事典」。
ランドネ編集部