JTの新商品は「心の豊かさ」 たばこの未来危惧、市場創出へ開発部門も設立 月刊Biz・スイッチ
社会や人々の価値観に合わせた「心の豊かさ」を提供する-。日本たばこ産業(JT)は、主力のたばこに対する社会の見方が厳しさを増す中、価値観の変化に応じた全く形の異なる製品を生み出し始めた。専門的に研究開発を担う「D-LAB(ディーラボ)」を令和2年に設立し、利用者に深呼吸を促すクッションなどを開発している。 JTは現在、売上高全体の9割超を占めるたばこ事業の好調が継続。たばこ税の増税に伴う値上げ効果などが理由に挙げられる。 ただ、たばこを狙った増税は今後も繰り返される可能性があり、さらに世界的な健康志向の高まりを考えれば、必ずしも将来的に安泰とは言えない。「自らの力で自らを変えていく」。ディーラボの御神村(みかむら)友樹ディレクターは、危機感が背景にあることを明かす。 平成25年に前身部署が4人でスタートしたディーラボは今や約60人に拡大。同社グループが掲げる「心の豊かさ」とは何かというところから考察している。 豊かさにつながるテーマの一つに「呼吸」を設定。深呼吸の習慣化を促す筒状の小型機器「ston s(ストン エス)」は、吸うだけで発生する香りやカフェインなどの成分を楽しめる。ゆっくりと膨張・収縮を繰り返すクッション「fufuly(フフリー)」は、抱えると呼吸のリズムが同調する効果があるとされる。 そのデザイン性や技術が評価され、さまざまな海外のコンペティションで受賞したほか、今年4月にイタリア・ミラノで開かれた世界最大規模のデザインイベントでも絶賛された。 「全体で100前後のプロジェクトが進行中」(御神村氏)だが、事業化は15~20年後の長いスパンで検討。将来、満を持して新たな市場の創出を提案する考えだ。(福田涼太郎)