ステップワゴンもオデッセイも床下格納なのに「フリード」だけなぜ違う? 3列目席に左右跳ね上げシートを採用する秘密
乗り心地と快適性にもこだわった新型フリードの3列目席
実際、身長172cmの筆者がより快適に座れるのはフリードのほうであり、新型はクッション性もなかなかだ(立ち上がり性にかかわるヒール段差=フロアから座面先端までの高さに関してはシエンタ330mm、フリード260mmと、シエンタが有利)。結果、3列目席に2名乗車しやすいのもフリードのほうなのである(※数値はすべて筆者の実測値)。 もし、新型フリードで3列目席床下格納式を決行したとすれば、シートサイズが小さくなり、かけ心地や居心地で、フリード伝統の「大人でもちゃんと座れる」3列目席にはできなかったはずである。つまり、コンパクトミニバンでは、3列目席格納時に3列目席の存在をすっきり隠すか、3列目席のかけ心地、居心地を優先するかの二択のパッケージングになるわけだ。 ただし、左右跳ね上げ式の一般的なデメリットとして、跳ね上げ、復帰操作の大変さ(重さ)がある。とくに小柄な人だとはね上げる際に力がいるだけでなく、高い位置に跳ね上げるため、操作に苦労することになる(トヨタ・ノア&ヴォクシーの4代目ではそこに着目し、軽い操作感かつワンアクションで跳ね上げ、固定まで行える世界初のワンタッチスペースアップシートを採用している)。 それは先代までのフリードにもいえることなのだが、新型フリードでは3列目席の軽量化、かけ心地を損なわない範囲の薄型化を行い、3列目席左右跳ね上げ時の格納の高さを先代より90mm低め、シート上端位置を地上1390mmとし、なおかつ固定するベルト位置を手前に移動したことで、小柄な人でも格納操作がしやすいように工夫されているのだ。 あわせて、3列目席を跳ね上げ格納したときに、どうしても塞いでしまうリヤクォーターウインドーの面積を新型では1.5倍に拡大。格納時でもリヤクォーター上部に高さ80mmの明かり取り、視界を確保しているのだから気が利いている。 さらに、3列目席床下格納式、またはシエンタの2列目席下格納式と違い、左右跳ね上げ式のデメリットとなる、格納時の左右シート部分によって狭められるラゲッジルーム上部の幅についても、新型フリードではシートの薄型化によって先代比+160mmの幅を稼いでいる。 もっとも、荷物をそこまで高い位置にまで積み込む機会は、アウトドアやキャンプなどのレジャー、小さな引っ越し以外では、まずないともいえる。 ということで、フリードのようなコンパクトミニバンでは、3列目席の格納に際し、ボディサイズの制約と、3列目席のかけ心地、快適性を優先すれば、左右跳ね上げ式にメリットがあるという判断で、新型フリードも左右跳ね上げ式を継承しているということだ。
青山尚暉