『若き見知らぬ者たち』内山拓也監督×磯村勇斗 “主人公の交代劇”への挑戦【Director’s Interview Vol.441】
皆が“若き見知らぬ者たち”
Q:お二人ともストイックに映画作りに臨まれているように見えます。実際に撮影して、お互いの印象はいかがでしたか。 内山:真面目だなとは思いましたが、日々どういうものを捉えながら向き合っているかなど、ソウルの部分では僕にちょっと似ているものを感じました。全然違う場所で生まれ育ってきて、この作品で初めて一緒にやったわけですが、近しいシンパシーみたいなものがありました。今は作品を撮っていないので、コミュニケーションは自ずと遠ざかっていますが、どこかで彼のことを意識している部分があるし、間が空いても久しぶりに会っている感じもなく、どこか繋がっているような感覚があります。 磯村:いやもう、内山監督が言ったことと全く同じことを僕も思っています。やはり作品を経て、お互いの中に生まれる信頼度や、今“ソウル”という言葉がありましたが、そういった繋がりはガッチリしたものになったなと。でもそれは別に“熱いモノ”などではなく、いい具合にマイルドにお互いの距離感を保っている。マインドの部分でお互いに通じるものがあるからこそ、何も話さなくても居心地がいい関係になっている。 こういう出会いって不思議で、そうならない関係性もある。一方で『若き~』で出会ったメンバーは、撮影が終わってからも皆で定期的に集まりご飯を食べたりしています。そんな関係性はこれまで自分の中で無かったので、それぐらい現場は愛おしいものだったし、皆で同じ方向を向いていたからこそ生まれた、結晶みたいなものなのだろうなと。 Q:お二人が同世代だったのも、大きい部分はあったのでしょうか。 内山:もちろんあるとは思います。こういうテレビ見ていたよね、こういうゲームしていたよね、といった共通言語はあると思いますが、それはあくまで表面的な部分。僕らの中では、豊原さんや滝藤さん、霧島さんも同じようにいましたし、そこに上下関係や隔たりなどは無かった。僕たちは若さや年齢を意識しないし、むしろそういうふうに括ることがあんまり好きではない。皆が常に“若き見知らぬ者たち”なんだよということが、僕たちの中で共通言語としてありました。そういった感情や思いみたいなものを届けられたらいいなと思っています。 原案/脚本/監督:内山拓也 1992年、新潟県出身。文化服装学院入学後、学業と並行してスタイリスト活動を始めるが、その過程で映画の撮影現場に触れ、映画の道を志す。23歳で初監督した『ヴァニタス』(16)がPFFアワード2016観客賞を受賞したほか、香港国際映画祭にも出品を果たし、批評家連盟賞にノミネートされる。俳優の細川岳と共同で脚本を書いた『佐々木、イン、マイマイン』(20)で劇場長編映画デビュー。2020年度新藤兼人賞や第42回ヨコハマ映画祭新人監督賞に輝く。King Gnu「The hole」、SixTONES「わたし」などのMV演出や『余りある』(21)『LAYERS』(22)などの短編や広告映像を手がけて話題を集め続け、「2021年ニッポンを変える100人」に選出される。『若き見知らぬ者たち』は待望の商業長編初監督作となる。 磯村勇斗 1992年、静岡県出身。高校時代から地元の劇団に入団し、2014年に俳優デビュー。2017年の連続テレビ小説「ひよっこ」(NHK)でお茶の間に広く知られると、「今日から俺は!!」(NTV)、「サ道」シリーズ(TX)、大河ドラマ「青天を衝け」(NHK)、「恋する母たち」(TBS)など話題のドラマに続々と出演。2022年には映画『ヤクザと家族 The Family』(21)『劇場版 きのう何食べた?』(21)で第45回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞する。『ビリーバーズ』(22)で映画初主演。『PLAN 75』(22)ではカンヌ国際映画祭のレッドカーペットも踏んだ。2023年は『最後まで行く』『波紋』『渇水』『月』『正欲』と5本の出演作が公開され、『月』で第47回日本アカデミー賞最優秀助演男優賞を受賞。今年はドラマ「不適切にもほどがある!」(TBS)の一人二役も記憶に新しく、秋には映画『八犬伝』(24)の公開も控える。 取材:文: 香田史生 CINEMOREの編集部員兼ライター。映画のめざめは『グーニーズ』と『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』。最近のお気に入りは、黒澤明や小津安二郎など4Kデジタルリマスターのクラシック作品。 撮影:青木一成 『若き見知らぬ者たち』 磯村勇斗 岸井ゆきの 福山翔大 染谷将太 伊島空 長井短 東龍之介 松田航輝 尾上寛之 カトウシンスケ ファビオ・ハラダ 大鷹明良 滝藤賢一 / 豊原功補 霧島れいか 原案・脚本・監督:内山拓也 ©2024 The Young Strangers Film Partners 10月11日(金) 新宿ピカデリーほか全国公開
香田史生
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