”腐敗”しきった「上層部絶対主義」の姿はほとんど「忠犬」!…「上におもねり、部下に強権を振るう」地裁所長の衝撃の姿
「上にはきわめて弱く、下にはきわめて強い」所長
上への追随、追従傾向が極端なある大地裁の所長の例を挙げておく。 彼は、裁判官や職員の前で、「高裁の意見はちゃんと聴いたのか?まず上級庁の意見を聴きなさい」、「それは本当に事務総局の考え方と同じなのか?もしかしたら違うのではないのか?」などといった言葉を毎日のように使用するので、職員たちから「忠犬ハチ公みたいな人」とささやかれていた。もっとも、犬が亡き飼い主を慕うのは美徳だが、裁判官たちの独立を守る立場の人間が、いたずらに事務総局や高裁事務局(事務総局の局長も、高裁事務局長も、大地裁の所長からみればかなりの後輩である)の意向を条件反射のように気にすることは、決して美徳とはいえず、先の職員たちの言葉は、ハチ公の名誉をいたく傷付けるもののように思われる。 たとえば前記のような所長たちの裁判員制度絶賛の大合唱も、以上のような事態を踏まえて受け止めるべきものなのである。 こうした、支配と追随の二面性の結果として、所長の「上にはきわめて弱く、下にはきわめて強い」という問題のある姿勢はどんどんひどくなっていく。ことに、所長時代に「成果」を挙げることに腐心するような人物が所長になると、下の裁判官たちは大変苦労することになる。なお、判事補たちに対しては所長もおおむね愛想がいいが、若い人たちに対して愛想がいいのは、どこの組織の長でも同じである。 私は、所長経験者や現に所長をしている裁判官から、「瀬木さん、所長って楽そうにみえるけど、やってみるとイヤな仕事だよ」という話をされた経験が何回もある。もちろん、所長が楽しくてたまらないという人もいると思うが、現在の裁判所においてそのように感じるのがどのような種類の人間であるかについては、読者の御想像にお任せしたい。 『「もう二度と関東には戻れず、地方を転々と」…一度歯向かえば“終わり”? 日本の司法制度を蝕む「最高裁事務総局」中心体制』へ続く 日本を震撼させた衝撃の名著『絶望の裁判所』から10年。元エリート判事にして法学の権威として知られる瀬木比呂志氏の新作、『現代日本人の法意識』が刊行されます。 「同性婚は認められるべきか?」「共同親権は適切か?」「冤罪を生み続ける『人質司法』はこのままでよいのか?」「死刑制度は許されるのか?」「なぜ、日本の政治と制度は、こんなにもひどいままなのか?」「なぜ、日本は、長期の停滞と混迷から抜け出せないのか?」 これら難問を解き明かす共通の「鍵」は、日本人が意識していない自らの「法意識」にあります。法と社会、理論と実務を知り尽くした瀬木氏が日本人の深層心理に迫ります。
瀬木 比呂志(明治大学教授・元裁判官)
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