センバツ甲子園 九国大付、粘り最後まで 悔し涙糧に「夏」飛躍を /福岡
第94回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高校野球連盟主催)は大会第9日の28日、準々決勝で九州国際大付が浦和学院(埼玉)に3―6で敗れ、4強進出はかなわなかった。リードを許しながらも2度追いつき終盤まで全力で戦う姿に、アルプス席の約600人の学校関係者だけでなく、球場全体から惜しみない拍手が送られた。選手たちはこの悔し涙を糧に、再び夏に戻ってくることを誓い甲子園を後にした。【浅野翔太郎、山口敬人、成松秋穂】 1点をリードされ迎えた八回二死満塁。この試合最大のチャンスで打席に4番・佐倉(2年)が入ると、九国大付のアルプス席の一団が、ブラスバンドの「アフリカン・シンフォニー」に合わせて上下する。 「間を抜ければ二塁の黒田さんも絶対還ってくる」。佐倉は直球を左前へ。代打で四球を選び出塁していた三塁走者の浅嶋(2年)が生還し同点。二塁走者の俊足・黒田(3年)は相手の好返球が勝り逆転とはならなかったが終盤で追いつく展開に、アルプス席の生徒らは抱き合って喜んだ。浅嶋の父貴弘さん(50)は「息子が『甲子園で勝てる高校に行きたい』と進んだ道。チームの力になりうれしい」とたたえた。 3試合目の先発となる香西(3年)は「これまで打ち取ってきた外角の変化球で粘られた」と苦しみながらも、打線の援護を受け踏ん張り続けた。1点を追う四回には小田原が同点適時二塁打。母真由美さん(49)は「ここで打ってくれて良かった」と塁上の息子を見つめた。 だが底力を見せたものの、11年前の準優勝を超えることはできなかった。試合終了後にアルプス席にあいさつに来た選手たちには惜しみない拍手が送られた。主将の野田(3年)の父弘二さん(49)は「よく成長した。夏に向けまた仲間を信じて上を目指してほしい」と目を潤ませて拍手を送り続けていた。 ◇OB、後輩の活躍に刺激 ○…アルプス席には野球部のOBも多く駆けつけ、後輩たちの戦いに声援を送った。今春大学を卒業した福岡市の貫田智博さん(22)らは当時の野球部の先輩・後輩6人で駆けつけ応援した。「お互いに左の好投手が投げ合う良い接戦」と貫田さん。「例年に増して体つきがしっかりしている選手が多い」と感心した様子だった。春から就職が決まっており、「後輩の活躍に刺激をもらいました」。 ……………………………………………………………………………………………………… ■青春譜 ◇勝負強さ、大舞台でも 小田原義・外野手=3年 1点を追う四回1死二塁、浦和学院の好投手の初球をフルスイングした打球は左中間を大きく超え、外野フェンスに直撃した。「バットを短く持って、何とか1点を返そう」と振り抜いたあわや本塁打という当たりは貴重な同点打となった。「自分の役目はチームのために点を取ること。良かった」と振り返った。 元々二塁手だったが新チームでは一時、先発の座を失った。それでも秋季九州地区大会の明豊戦で代打満塁本塁打を放つなど、チャンスでの強さは失わなかった。今大会前も与えられた背番号は「12」。選手の調子を見てメンバーを判断する楠城監督も「最初はあまりよくなかったが、辛抱することが大事かなと痛感した」と二塁打2本を含む甲子園での5安打を評価した。 それでも勝るのは、敗北の悔しさだ。「(相手の宮城のような)左投手を打てるように改善したい。悔しさは夏に向ける」。次への戦いは始まっている。【浅野翔太郎】 〔福岡都市圏版〕