中国で浮き彫りになるシェア自転車問題:便利さの裏に潜む課題
【東方新報】近年、中国各地で普及が進んでいるシェア自転車は、都市部の短距離移動手段として多くの市民に利用されている。しかし、その便利さの裏には、深刻な環境問題や社会的課題が隠れている。 広東省(Guangdong)東莞市(Dongguan)厚街鎮では、市民から「大陂川に大量のシェア自転車が投げ捨てられている」という通報があった。現場では清掃作業員が川から5台の自転車を回収したが、厚街鎮全体では毎日10台以上、月間で300~400台ものシェア自転車が河川やその周辺から回収されている。回収作業には6人がかりで行われ、時間と労力を大幅に費やしているのが現状だ。 こうした状況は厚街鎮だけではなく、中国各地で見られる現象だ。シェア自転車の破棄や不適切な利用は、環境汚染や公共空間の占有といった深刻な影響を及ぼしている。 中国では、シェア自転車がピークを迎えた2017~2018年頃、多数の企業が市場に参入し、過剰供給が発生した。その結果、使われなくなった自転車が「自転車の墓場」と呼ばれる巨大な廃棄場に山積みされる問題が発生した。今回の厚街鎮のように、川や公園などの公共スペースに投げ捨てられるケースも後を絶たない。 シェア自転車の放置は、都市部の道路や歩道を占拠し、歩行者や他の交通手段にとって大きな障害となっている。特に学校や駅周辺では、自転車が乱雑に放置される光景が日常的に見られ、都市管理者にとって頭の痛い問題となっている。 弁護士によると、シェア自転車を故意に破壊したり投げ捨てたりする行為は、刑事犯罪に該当する可能性があり、厳しく取り締まる必要があるとされている。実際、多くの自治体がシェア自転車企業に対して、管理の強化や定期的なメンテナンスを義務付けている。 しかし、法的措置だけでは問題を根本的に解決するのは難しい。利用者自身の意識改革が不可欠だ。シェア自転車は公共財産であり、個人の利用が社会全体に影響を与えることを理解する必要がある。 中国政府や地方自治体、シェア自転車企業は現在、持続可能な運営モデルを模索している。一部の都市では、利用者の信用スコアを導入し、放置や破壊行為を行った利用者にはペナルティを課す仕組みを導入している。また、回収した自転車をリサイクルして新たな製品に再利用する取り組みも進められている。 シェア自転車は都市部の移動効率を大きく向上させる一方で、その運営と管理には多くの課題が伴っている。シェア自転車が本来の目的である「環境に優しい移動手段」として機能し続けるためには、企業、利用者、政府の三者が協力し、管理体制の強化や教育啓発を進める必要がある。 便利さと持続可能性を両立させるためには、個々人の責任ある行動が不可欠だ。そして、社会全体での取り組みが、この革新的な移動手段を将来の都市生活における持続可能な選択肢として定着させる鍵になるだろう。(c)東方新報/AFPBB News ※「東方新報」は、1995年に日本で創刊された中国語の新聞です。