日米の世論調査はいったいどこまで正しいのか? 「10.27衆院選」「11.5アメリカ大統領選」のリアルな読み方
■難しかった「コロナ禍での出口調査」 もっともこの謎解き、そんなに難しくはないと思う。2021年秋はまだコロナの真っ最中、出口調査において聞く側も聞かれる側も、まだマスクをしていたはずだ。それ以前の出口調査とは、まるで雰囲気が変わってくる。たぶん投票行動を尋ねても、他人行儀の答えしか返ってこない。いや、知らない人との会話を避ける保守的な有権者もいただろう。 これでは正確な回答が得られないのも無理はない。側聞するところによると、今回の期日前投票の出口調査においては、投票した人にタブレット端末を渡し、報道側は「私は見ていませんから、記入をお願いします」というスタイルが採られているらしい。これも正確なデータを得るための健気な努力と言えるだろう。もっともその結果、2024年選挙における世論調査が当たるかどうかは、「とにかくやってみなければわからない」のである。
3年前はテレビ局だけでなく、新聞社の「情勢調査」も軒並み総外れであった。事前に読売新聞は「過半数(233)の維持が微妙」と書き、産経新聞は「218~246議席」と書いていた。ところが結果は261議席である。朝日新聞だけは「251~279」といい線をいっていた。さて、いったいどこで差がついたのだろうか。 世論調査においては、これまでRDD方式が主流であった。受話器を取ると、自動音声で「あなたはどの党に投票しますか?」と問いが流れてくるというあの方式だ。「ランダム・デジット・ダイヤリング(Random Digit Dialing)」の略で、コンピューターで無作為に数字を組み合わせて番号を作り、機械的に電話をかけていく。
電話帳に番号を掲載していない人にもアクセスできる、という強みがあり、これで固定電話と携帯電話にかけまくると、それなりに信頼性のあるデータが得られるという前提になっている。 ■なぜ朝日新聞は「ニアピン賞」をとれたのか? しかるに3年前はそれで大外れとなった。そんな中で朝日新聞が「ニアピン賞」になったのは、「小選挙区の予測はネット調査に絞る」という勇気ある決断を下したからだろう。いわば世論調査における技術革新だ。今の有権者は、電話の向こうにいる「誰だかわからない人」に対して、容易に心を開いてはくれない。むしろ協力してくれそうな人を見つけたら、ショートメールなどで尋ねるほうがホンネを語ってくれるらしいのだ。